卒業式の祝辞は、大人になってから響く|未婚の母でもなんとかなる
娘が小学校を卒業した。
先生は泣いていた。
娘はまだ実感がないようだった。
私は祝辞が刺さった。
入学式はコロナ禍で来賓のいない静かな入学式だった。
学校はオンライン授業、運動会や遠足もない。
そんな始まりだった。
娘はいまだにマスクを外せない。

✦ 心に残そうと思ったのに
卒業式の最中、これはメモしなきゃと思った言葉がいくつかあった。
でも忘れた。
スマホを出す雰囲気じゃなかったし、心に刻んで後でメモろうと思ったのに、刻めなかった。
覚えているのは2つだけ。

✦ チャレンジを恐れないで
校長先生の言葉だ。
昔から変わらず校長先生や来賓の言葉は長い。
それは変わらないのに、なぜか響く。
これが大人になったということなのか。
長くてちょっとしか覚えてないけど、こんなことを言っていた。
「これから大人になっていく中で、たくさん失敗すると思います。でも失敗を恐れないで。周りを見てください。あなたの周りにいるお友達は、失敗を笑ったりしません。失敗を恐れずに楽しく挑戦してください。」
ありきたりな言葉。
でも今の自分には違って聞こえた。
少し、うるってきた。
大人になると、失敗が怖くなる。
子どもの頃は転んでも泣いてまた立ち上がれたのに、いつの間にか転ぶ前に立ち止まるようになる。
失敗したらどう見られるか、笑われないか、取り返しがつかないんじゃないか。
そういうことを考えてから、動くようになる。
でも本当は、笑う人がいる(かもしれない)と思うから怖いんだと思う。
失敗しても笑われないと思える場所なら、もう少し踏み出せる(かもしれない)。

校長先生の言葉は、子どもたちに向けた言葉だった。
でも私には、自分に言われているように聞こえた。
チャレンジの途中だから。かな?
失敗を重ねながら、それでも続けている最中だから。かな?
なぜだろう。
安心して失敗できる場所って、大人にも必要だ。
そういう場所を作りたいと思って、Mintor(ミンター)を作りはじめたんだ。
そのことを思い出した。

✦ 今は初期装備
来賓の話が面白かった。
「なんのために勉強するのか分からない。勉強なんてする意味ない。そう思ったことはありますか?」
そう問いかけてから、勉強する意味を、マインクラフトで例えていた。
マインクラフトは、最初は何も持っていない。
木を切って、石を掘って、少しずつ素材を集める。
その素材で道具を作って、また次の素材を集めに行く。
いきなり城は作れない。
でも続けていれば、いつのまにか街になっている。
勉強もそうだよ、と。

今やっていることが何の役に立つのかわからなくても、それが装備になる。
装備が増えれば、作れるものが変わる。
最後はこう締められた。
「みんなはどんな街を作りたいですか?全員が同じ街にはならないでしょう。それでも、だからこそ、みんなが作る街が楽しみで仕方ありません。」
子どもにはわかりやすかったんじゃないかな。
大人の私も、うなずいていた。
マインクラフトはよく知らないけど。
小学生の頃、なんで勉強するのかわからなかった。
中学生の頃も、高校生の頃も、正直よくわからないままだった。
でも今は分かる。
あの頃集めていたものが、今の自分の装備の基盤になり、集めた装備で街を作り、さらに装備を集める。
その循環の中にいる。
気づかないうちに、ちゃんと積み上がっていた。
そして今もまだ、装備を集めている途中だ。
正確には「集め直している」とでも言おうか。
41歳でも、初期装備に戻る場面がある。
知らないことに飛び込むたびに、また石と棒から始める。
でもそれでいい。
集めて作り続けていれば、いつか街になる。
卒業する子どもたちも、これから長い時間をかけて装備を集めていく。
焦らなくていい。
これまでのステージで集めたものを大事にしながら、これから始まる新しいステージでも、少しずつ集めて作っていけばいい。

✦ 生まれてきてくれてありがとう
29歳で婚約破棄の末、未婚で産むと決めた時、絶対に不幸にしないと誓った。
3月24日は、そう誓った日。
私にとって特別な日。
この子のすべてを背負うと決めて、ひとりで産んだ。
小学生になって中学生になって…
大人になった時に、私の子で良かったと思ってほしい。
そう思って頑張ってきた。
先週、小学校の卒業式で大きくなった娘の姿を見て、胸が熱くなった。
あの日の自分は、13年後にこんな日がくることを想像できただろうか。
…正直、そんな先のことを考える余裕はなかったよね。
目の前のことをひとつずつやるしかなかったから。
でも、あの頃の自分を褒めたいと思った。
決めた自分、行動した自分、諦めなかった自分。
全部全部、私が選んで、私が頑張ったからだ。
他の誰かじゃなくて、私が選んだ道。
でも、決してひとりではなかった。
言葉と一緒に励ましてくれる存在、言葉はなくても見守ってくれる存在、手を差し伸べてくれる存在。
たくさんのやさしさに、助けられながら。
それでも
やってきてよかった。
そして、生まれてきてくれてありがとう。
あなたがいるから、私もここにいる。
卒業おめでとう。

