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「エンタープライズCS勉強会の開催を通じて見えた3つのこと」

自己紹介

こんにちは!テックタッチでシステム提供事業者向けにカスタマーサクセスを担当している三嶋と申します。大企業の基幹システム導入プロジェクトをメインとするITコンサルタントからCSへと転身し、ラクスでCS部長を経験した後、医療介護系サービスを経由し、テックタッチに入社しました。テックタッチでもCSを担当しており、日々お客様にさらなる価値を感じていただけるよう、チームでがんばっています。

テックタッチの名前の由来はカスタマーサクセス用語にちなんでおりであり、業界団体「日本カスタマーサクセス協会(JCSA)」にも理事として立ち上げから参画。CSの発展と実践知の蓄積・発信に尽力しています。自分自身も、他社の様々なナレッジを勉強させていただきながら、チームの発展に貢献しようと頑張っています。

さて、これまで日本でのカスタマーサクセスは、先行して成長したSMB/MM(中小企業)向けバックオフィスSaaSの事例が多く、エンタープライズ企業(大手企業)をメインターゲットとしたカスタマーサクセスの事例は多くありませんでした。弊社のEX事業部(テックタッチの従業員向けソリューション)はエンタープライズ企業をメインターゲットとしており、CS組織を成長させるうえで、参考となる情報が不足している状況に課題を感じていました。そこで、同じようにエンタープライズ企業向けにCS活動している仲間と集まって情報交換をし、発展につなげようという「エンプラCS勉強会」を開催しました。

エンタープライズ向けCSの特徴

 羅列していくとキリがありませんが、エンタープライズ向け
CSには、大きく以下のような特徴があると考えています。

・個社ごとのプロセスカスタマイズが必須
比較的顧客単価の低いSMB向けと最も大きく違う点は、プロセスのカスタマイズです。SMB向けでは標準化されたオンボーディングや支援プロセスが基本ですが、エンタープライズでは個社毎に異なる状況やニーズを受け止めてそれぞれ対策を講じなければ、プロジェクトは驚くほどすぐにストップしてしまいます。また、顧客単価の高さも影響しています。エンタープライズの企業の総数はSMBと比較して圧倒的に少ないですが、個社ごとに見ると社員数が多く単価は高くなるため、特にアーリーフェーズのCSでは大型顧客の解約が解約率に大きな影響があり、場合よっては1社で解約率の目標を超えてしまうこともあります。
標準的な活動プロセスを定めつつも、個社別にカスタマイズする余地をどこまで作るのか?が、コストの最適化と効果的な活動の両立で頭を悩ませる部分です。

・個々人のスキルセットで求められる能力が幅広い
エンタープライズ向けCSでは、顧客のステークホルダーが多岐にわたり、経営層から現場まで階層が深く、さらには複数の部署と連携をする必要があります。そのため、サービスを有効利用して価値を出していただくという標準的なプロセスに加えて、アカウントマネジメントの要素が強くなってきます。プロジェクトを円滑に進めるため、CxOクラスとは事業の方向性やビジョンに対する価値を同じ目線で語り、現場ではサービスの有効活用のため、エンジニアリング的な知識も必要になることもあります。更には、そのプロジェクトを同時並行でいくつも走らせ、解約に至らないように注意を配っていくわけで、自社の提供サービスを熟知していることはもちろん、顧客の事業ドメインの社会的な状況や中期計画など、必要になる知識・スキルの幅がとても広くなります。

・ヘルススコア
統計的に解約可能性が高い顧客を見極め、活動の優先度を決めるとともにスコアを上げることでCS活動の成否を決めるヘルススコアはもちろんエンプラCSでも極めて有効な手段です。一方で、統計的に見ようとはするものの、どちらにしろ各顧客に対して「できる限りのことをする」というマインドは変わりません。それは先ほど上げたように、1社当たりの顧客単価が高いことや、そもそもエンタープライズと定義されている企業が世の中に多くなく、失うことのインパクトが大きいことが主な理由です。そのため、あまり価値の出ていない顧客には、アカウントプランを作成して個別にアプローチを考える必要があります。また、価値が出ている顧客においてもライバル企業が営業をかけてきてリプレイスが検討されることもあり、別部署のXXさんがライバル企業の営業と会って話を聞いたらしい、といった情報を得ることが解約阻止につながるケースもあります。

これらの理由により、サービスの利用状況に基づいたヘルススコアの設計に加えて、個社別の事情やキーパーソンタッチとの関係性を、どのようにスコアや活動計画に織り込んで行くかも、重要なポイントになります。

エンプラCS勉強会の開催と気づき

そんな、エンプラCSの活動のベストプラクティスについて模索していた弊社VP of CS/Operationsの垣畑が、勉強会を開いて他社の事例、やり方を聞いてみたい!と企画がスタート。知り合いを中心に声をかけ、エンタープライズ顧客向けにサービスを展開している6社で第1回のエンプラCS勉強会が開催されました。各社とも似たような課題を持っていたり、また事業ドメインならではの悩みなどもあり、とても話が盛り上がりました!

一番の発見は、CSの話をしながら懇親会をやると、とても楽しい!という自分の感覚でした。他社の事例を学び、「それあるある!」と共感したり、「こういうのどうやってるんですか?」と聞くとそれぞれ異なる答えが返ってきたり。今の組織でやってきたことが肯定されたり、また「そういう考え方があるのか」という気づきがあったり、発見の連続でした。活発に意見交換をしたかったので、雰囲気を軽めにするべく、進行のスライドもかなりポップに寄せました。

以下に、主なテーマごとの学びを共有します。

■アップセル・クロスセルの難しさ

これは各社とも悩んでおり、勉強会では以下のような学びがありました。

・CSと営業の役割分担
CSと営業の役割分担は「キーパーソンとの接点」によって決まる傾向あり

・部門横断的な活動の、CSミッションとの接続の困難さ
担当部署が異なるとCSの従来持つ「解約率低下」ミッションとの乖離が起きやすく、営業と連携したり、専門のチームでないと展開が難しくなりがち。部署横断的な提案をCS起点で進めるには、組織設計と営業連携の戦略が不可欠。

総じて、普段対面している人が、アップセル・クロスセルでも同様にキーパーソンである場合はCSが活動する設計で、別部署になってしまう場合は、Salesが担当する切り分けが多いように思います。理由としては、例えば経理➡人事のように部署をまたがったり、あるいは別のグループ会社への展開のような場合、元々CSが持っている「対面にとっての価値を出す」というミッションとの乖離が大きくなることで「どちらをどのくらい優先するのか?」を個人の中で判断して活動優先度をつけることが難しくなり、結果としてアップセル・クロスセルが二の次におかれてしまうことが上げられます。

もちろんこれはサービスによって異なる部分が多く、例えば人事ドメインが対象のサービスは同じ人事内でアップセル・クロスセルがある程度完結することも多いからCSがある程度関わる設計でも問題なさそうだが、テックタッチのようにどの部署も顧客となりうるようなサービスの場合は、他の部署に対して展開していく、はCS起点ではなかなか難しいといったような違いがありました。

また、昨年までは解約率低下がミッションだったが今年からNRRがミッションに入ってきたというCSも複数社いました。日本市場はTAMがそれほど大きいわけではなく、ある程度成長するとどのように売上を増やしていくか、という課題に直面することが多く、各社とも頭を悩ませている印象でした。

■採用と育成の課題

成長中のベンチャーで、採用に悩まない企業はないのではないでしょうか?各社の悩みから、以下のような傾向が見えてきました。

・採用難易度の高まり
成長に伴い採用予定人数が増加する一方、応募人数は変わらず、採用人数の達成が困難。

・育成の難しさ
エンプラCSで重要となるスキル - PM(プロジェクトマネジメント)・AM(アカウントマネジメント)スキルの育成難易度が高い。

・ドメインエキスパート採用の重要性と課題
特に業界・業務特化のサービスでは、ドメイン出身のエキスパートは重要な役割を持つが、ベンチャーを志望する人が多くなく、採用難易度が高い。

アーリー期は比較的即戦力の採用を中心に考えてきたベンチャーは、急成長フェーズに入ると、特に採用課題に直面することが多いように思います。理由はシンプルで、採用に対する応募人数はそれほど変わらないのに、採用予定人数がとても増えるから、となります。年に一度、たまに来る超即戦力人材を採用できればよかった時代から、年に何人も採用する時代になると、当然採用予定人数を満たす難易度は格段に上がります。特にエンタープライズCSでは、アカウントマネジメント、プロジェクトマネジメントの要素が強くなるため、そういった大規模プロジェクトを回した経験があるSIerやコンサルタント出身が採用の有力候補となってきます。一方で、現SIerで特に経験豊富な方の転職意向がベンチャーに向くかというとなかなかそうならず、結果として採用したいターゲットからの応募が少ない、という状況になりがちです。各社とも、他社との合同採用イベントやnote、PRなど広報を活発にして転職エージェントの認知・引き合いを高めると同時に、魅力あるカルチャーを醸成して候補者をアトラクトするなど、様々な方法で採用に向き合っていました。

特に面白いと感じたのが、ドメインエキスパートの採用です。サービスを展開する領域で元々働いている方は、ターゲット顧客が普段感じている課題感を身を以て知っていますし、元々顧客の解像度がとても高いという特徴があります。企業によっては、特定業務に精通した方の採用意欲がとても高い一方で、特にエンタープライズ企業の方はなかなかベンチャーに転職しようという意欲のある方は多くなく、そもそも応募が全然ないという課題も見受けられました。また、エキスパートの割合は多くて3割、採用したいけども候補がいなくてまだ1人もいないという企業もありました。まだエキスパートが少ない場合は、プロジェクトマネジメントを主なスキルとするCSMと役割分担していて、人数が3割近くなってくると同じCSMとして活躍するなど、組織設計がサービス分野やフェーズによって変わってくる点はとても興味深かったですね。

テックタッチは基本的にドメイン特化型の製品ではないですが、一方で従業員向けチームだと「経費精算」「人事」などの領域での用途も多いことから各領域にドメインエキスパートを作っていく施策をやっています。しかし、元々人事システムや経費精算システムの導入コンサルをやっていたような、プロジェクトマネジメントスキルを持つメンバーが主軸で、経理や人事出身のCSMがいるわけではありません。そこも他社との違いが明確で、面白いポイントでした。

今後の展開

参加した各社からは「とても勉強になった」「今後も参加したい」というお声をいただいたので、継続して開催できればと思っています。初回は各社の基本的な課題についての共有がテーマでしたが、2回目以降はさらに各業務を掘り下げていこうと思っています。このテーマで完走し、日本のエンプラCSのさらなる発展に、貢献していきたいと思っています!

私自身が興味深いと思っているテーマは、「カスタマーサクセス活動のROI」です。CSの存在意義に関わる根源的なトピックであるにもかかわらず、測定のメトリクスを考えるのが難しい部分でもあり、各社がどのように実践しているか学べるのが、とても楽しみです!

(初回)まずはお互いの基礎理解
・自己紹介と各社の紹介(事業概要、CS部門KGI/KPI)
・現在のCS組織体制(チーム、役割分担、規模)
・現状課題と感じていること
(担当顧客数、複雑なステークホルダー、導入/定着の難しさ、マルチプロダクト体制など)

(2回目)超基礎の業務について議論
・顧客向けオンボーディングプロセス(期間、体制、コンテンツ、ゴール設定)
・導入後の活用度・定着度(アダプション)向上のための具体的な取り組み
(トレーニング、活用支援、定期レビュー、サクセスプランニング)
・顧客の利用状況や成果をどのように測定・可視化しているか?(ヘルススコアとか)
・チャーン分析とそこからの学び(チャーンを防いだ/防げなかった事例などを具体的に共有)

(3回目)エンプラならではの業務について議論
・CSMが担うエクスパンション(アップセル/クロスセル)の機会創出と営業連携の実際
・顧客の成功指標(ビジネスKPI達成など)とエクスパンションの関連付け
・活用しているCSMツール、BIツール、コミュニケーションツール等とその選定理由、活用方法

(4回目)組織、人材、経営の話
・エンタープライズ担当CSMに求めるスキルセット
(コンサルティング能力、プロジェクトマネジメント、対大手折衝力など)
・採用・育成・評価の仕組みと工夫
・カスタマーサクセス活動のROI(投資対効果)をどのように測定し、経営層に報告しているか?

最後に

かなりマニアックな話題(?)にも関わらず、最後までお読みくださりありがとうございました。テックタッチのCSは、日頃の顧客対応はもちろんですが、様々な機会を作って自分たちのスキルアップ・組織力向上に努めています。

一緒にこのCS活動を楽しめる仲間も募集中です!


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