見出し画像

ヨルダンの死海に現れる "ピンクレイク" の正体

ヨルダンの荒野に広がる、微生物が描く奇跡の風景…


写真を見たとき、思わずこう思うかもしれません。

「ここ、どこの夢の国?」

「加工じゃないの?」

「本当に地球?」


でもこのピンクの湖、実在します。しかも場所は、あの "死海"。ヨルダン側の死海南部の沿岸で見ることができる、自然が生み出した奇跡の風景です。


上のインスタ投稿は、実際にピンクレイクの水面を撮影したものです。


ピンク色の正体は「生きもの」


この湖がピンクに見える理由は、光の反射や鉱物ではありません。主役は、塩を好んで生きる微生物 (好塩菌) です。

死海は、海水の約 10 倍というとんでもない塩分濃度を誇る極限環境。

普通の生き物は生きられませんが、ある特殊な微生物たちは、むしろこの環境を楽園のように感じています。

彼らが作り出すのが、「バクテリオルベリン」という天然のピンク色素。これは、強烈な太陽光や紫外線から自分の体を守るための“日焼け止め”のようなもの。

この色素が水中に溶け出すことで、湖全体がまるで絵の具を流したようにピンク色に染まるのです。


なぜこの湖は「いつも」ピンクなのか?


この死海沿岸のピンクレイクは、「たまにピンクになる」のではありません。この場所は、常にピンクの水をたたえている塩湖なのです。


理由はシンプルで、この水域の塩分濃度があまりにも高く、好塩性微生物たちが一年中ここで繁殖し続けているから。


彼らは強烈な太陽と塩の世界で生きるために、バクテリオルベリンというピンク色の色素を体内で作り続けています。


この色素が水中に溶け出すことで、湖全体がショッキングピンクに見えるほどの鮮やかな色に染まる。


つまりこの色は、一瞬の現象ではなく、この場所の "日常の色"。


荒野の真ん中に、まるで別の惑星の海のようなピンクの水が広がる―それが、この死海のピンクレイクなのです。


「死海」なのに、こんなに生命に満ちている


"死海" という名前から「無の世界」を想像しがちですが、実はここは、地球でもっとも過酷で、もっとも特殊な生命が生きる場所のひとつ。


人間にとっては過酷でも、微生物にとっては完璧な楽園。


その結果として生まれるのが、このピンクレイクという、自然が描いたアート作品なのです。


まるで地球が、自分で絵を描いているかのよう。

あまりの期待は禁物


ただしこのピンクレイク、このピンクに染まっている部分はそれほど広くありません。せいぜい 3-4 個のプールが染まっている程度です。

ですから、実際に行ってみると「あれ? これだけ…?」となることも。

でも、この場所の本当のハイライトは、実はここからです。ピンクレイクをさらに進むと死海の絶景に出会うことができます。この絶景まで行かずに帰ってしまうツーリストがあまりにも多いのです。

ピンクレイクの先にある「塩の橋」と、秘密のビーチ


ピンクレイクをさらに進んだ先には、アラビア語で 「Jisr al-Milh (塩の橋)」 と呼ばれる、もうひとつの不思議な風景が広がっています。

塩の橋についてさらに詳しくはこちらの記事もご参照ください👉死海の塩の橋 (Jisr al-Milh) | 歩いた人だけがたどり着ける死海南部の絶景

ここで目にする白い塊は、岩ではありません。すべて“塩そのものです。

死海は、世界でも最も塩分濃度が高い湖のひとつ。強烈な太陽によって水が蒸発するたび、溶けていた塩が結晶として残り、それが長い年月をかけて積み重なっていきます。

その結果、水面から突き出したキノコのような柱や、岸辺に層をなして固まった巨大な塩の塊が生まれました。

まるで彫刻や岩のように見えますが、触れるとザラザラしていて、すべてが結晶化した塩でできています。

この場所では、そうした塩の塊が連っている姿がまるで橋のように見えることから、「塩の橋」と呼ばれるようになったようです。

死海が何万年もの時間をかけて描いた、唯一無二のアート。ピンクレイクと塩の橋は、その最高の組み合わせなのです。



ここは、死海でも数少ない "本物の秘境ビーチ" 


この塩の橋の周辺には、死海沿いでもとても珍しい白い砂利のビーチが広がっています。


通常の死海のビーチは、大小の石がゴロゴロしていて歩きにくいのですが、この場所は塩と砂利が混ざった、なめらかな白い地面。しかも観光客で溢れているわけでもなく、静かで、圧倒的な "秘境感" があります。

何より特別なのは、このビーチが死海沿いの道路から見えないこと。

ピンクレイクの先にあるのが死海。遠目では、絶景が待ち受けているとは思えません。


車を降りて、歩いて辿り着いた人だけが、この景色に出会える―まさに“知る人ぞ知る”死海の隠れた絶景です。

ただし…設備は一切ありません。


この場所は秘境であるがゆえに、シャワーも売店も、トイレもありません。


死海で浮遊体験をすると、体はたっぷり塩に覆われてベトベトになります。そのままにしておくと肌がピリピリするので、自分で水をボトルに入れて持ってくるのがおすすめです。


もしくは、ピンクレイクの駐車場になっている場所で水を買うこともできますが、かなり観光地価格で、正直あまり安くはありません。


ビーチ自体に入場料はありませんが、駐車場に車を停めると、3 JD (ヨルダンディナール) ほどを請求されます。

これは公式のチケットではなく、たまたまこの場所を知っている地元のヨルダン人が "自主的に" 徴収しているような形です。


それでも、ピンクレイクと、白い塩の岩と、エメラルド色の死海を同時に楽しめるこの場所は、多少の不便さを超えても行く価値がある風景だと思います。


ガイドブックにはほとんど載らない、でも一度見たら忘れられない―それが、この「塩の橋」と秘密のビーチです。

ヨルダンは、まだ知られていない“絶景の宝庫”


ペトラ遺跡やワディ・ラムが有名なヨルダンですが、この国にはまだ世界に知られていない絶景が無数にあります。


ピンクに染まった死海の一部、月面のような砂漠、神話の世界のような渓谷、そして静寂の中に浮かぶ遺跡たち…


Picturesque Levant が大切にしているのは、「ガイドブックに載らない感動」を届けること。このピンクレイクと「塩の橋」も、まさにその象徴です。


これはフィルターじゃない。地球そのものがアート


スマホのフィルターや AI 画像が溢れる時代に、自然がここまで "ありえない色" を生み出すことに、少し驚かされます。


でもこのピンクは、加工でも CG でもなく、何百万年も続く地球の営みの結果。


そう思うと、ただ美しいだけではなく、少し神秘的で少し感動的に見えてきませんか?

こういう「ガイドブックに載らない風景」を、これからも伝えていきたいと思っています。

いいなと思ったら応援しよう!