オーシャン・ドッグスⅡ🐶 第28話:カメポンあんたまだ子どもや
「来るで!」
りうが叫んだ。
その時、アンの胸元のチャームが強く鳴った。
コン、と一度だけ。
光が、カメポンの甲羅にも走る。
「…アンママ」
カメポンが、静かに言った。
「ぼく、ちょっとだけ進化してもいい?」
「は?」
アンの耳が、思い切りそば立つ。
「進化? 今? なんでそんな危険な言い方サラッとすんねん!」
カメポンは、少しだけ目を細めて笑った。
「ぼく、小さいから。このままやと、ニーズヘグを“抱えて運ぶ”には足りひん。
ママ、さっき言ったよね。“渡す側になりたい”って。
そのための橋が必要なんやったら…ぼく、橋になる」
アンの喉が、きゅっと締め付けられる。
「カメポン、あんたまだ子どもや。進化って、ただ体大きくなるだけやない。戻られへんかもしれへんねんで!」
「うん」
カメポンは素直にうなずく。
「でもさ。ぼく、ママの頭の上で世界見てきた。
船も、空も、谷も、ルーシーも。“守りたい”っておもう景色が、もういっぱいある。
その景色、ニーズヘグに踏みつぶされるのはイヤ。
恐竜の続きとか、海竜の王とか、そういうことより、“いま目の前にいるみんな”が大事や」
ルーシーが歌を少し弱め、アンを見た。
「アン。決めるのはあなた。でも、カメポンの“やりたい”も、ちゃんと聞いてあげて」
アンは、ぎゅっと目を閉じた。
2-1-2で息を吸って、吐く。
「…わかった」
ゆっくりと目を開ける。
「条件1つ。勝手に“お別れ”とか言うな。
これは、帰り道までセットの“進化”や。橋になっても、ちゃんと戻ってこい。うちが、戻す」
カメポンの目が、ぱっと光った。
「約束。ぼく、ママの頭の上、好きやもん。
帰ってくる場所は、決めてる」
アンは甲羅に前脚を置いた。
胸のチャームと、カメポンの甲羅の模様が、同じリズムで光る。
「スサノオ、もう1段階。“進化の拍”に切り替え。
うちが、海の仲間を進化させる側に回る」
光が、甲羅に流れ込んだ。
カメポンの体が、ぐらりと揺れる。
小さなウミガメの輪郭が、ひとまわり、またひとまわりと大きくなっていく。
甲羅は、古い大陸みたいにひび割れ、色は深い緑とこげ茶が混じった重い色に変わる。
前足は、船のオールより太く長くなり、1回こぐたびに、洞くつの水が大きく流れを変えた。

「…伝説のアーケロン」
ルーシーが息をのむ。
「むかしの海にいた、大きなウミガメ。図鑑で見たときより、ずっときれい」
「カメポンや。名前はずっとカメポンやからな」
アンが甲羅の上で笑う。
巨大になったカメポンは、アンを頭の上にちょこんと乗せた。
そこだけは、いつものサイズ感のままだった。
「ママ、しっかりつかまって。ニーズヘグ、引っ張りに行くよ」
つづく
