オーシャン・ドッグスⅡ🐶 第1話:なんで最後“ハモ”やねん
まいど!うち、シバ・ゼロの船長、柴犬のアンやで🐾
海竜にさらわれたママたち家族を探すため、うちらワンコ軍団が特殊船「0系シバ・シップ」に乗って世界の海を駆け巡るで!
シーズン2の舞台は、ネパールからインド洋や!海竜ニーズヘグに囚われた子どもたちを助けるため、船をキャタピラ付きの陸上モードに変形させてヒマラヤのふもとまで爆走するねん。カトマンズの屋台の帝王ビノードのおっちゃんが作る美味しいモモ(ネパール餃子)や、犬に転生した修行僧デーヴァダッタじいさんとの出会いもあって、笑いと人情たっぷりの救出劇が始まるで!
最大の見どころは、やっぱり宿敵ニーズヘグとの大決戦!仲間と息を合わせた「2-1-2」の連携プレイ、そして親友の巨大古代ウミガメ「カメポン」が体を張ってうちらを守ってくれる、涙なしでは語れん胸アツの展開は絶対見てほしい!
手に汗握るワンコたちの海洋活劇、読まな損やで!一緒に海へ出よか、ヨーソロー!🚢🐶
朝の光は薄金、海は灰青。
神戸・メリケンパークの岸壁に、ネコ型配膳ロボの列が静かに頭を垂れた。
背のライトマストが2つ吸って、1つ止めて、2つ吐く。
その拍に合わせるように淡くまたたき、海面へ“細い光の道”を描く。
船首は、0系新幹線を思わせる丸い額。
乗組員は犬だけ。
海の救難と抑止、そして避難支援のために設計された〈シバ・ゼロ〉だ。

潮はまだ冷たく、金属と塩の匂いがうすく胸に刺さる。
桟橋の影だけひやりとしていた。
ネコ型配膳ロボは、岸壁のカフェから借り出された臨時の誘導員だ。
しっぽのライトが「2-1-2(出港合わせ)」に切り替わる。
アンがロボに首をかしげる。
「ネコさん、しっぽのライト点滅は2-1-2ちゃうん?」
ロボは2-1-3でぴこぴこ光った。
りうが即座に突っ込む。
「そこはズレるんかい」
あんこは肩をすくめ、
「安全規格は2-1-2やで。校正出しとく?」
と言う。
ロボが「ピコ」と鳴き、2-1-2にそっと合わせた。
ブリッジ。
白柴のあんこが首のタグを白く点滅させ、表示を最小に落とす。
「アンの見える窓、少し揺れてる。安全帯の光は出てるけど…無理はしないでね」
見える窓は甲板に出る安全の可視帯で、2-1-2に合わせるほど輪郭が強まる。
赤柴のアンは笑ってみせる。
「大丈夫や。2つ吸って、1つ止めて、2つ吐く。合わせるで」
境界の甲板に、光綱(足元を守る細い光のロープ)が細く走り、拍を記す譜面みたいに点滅した。
「係留、1本ずつ。焦らんでええ」
りうがコンソールを軽く叩く。
リッチーが喉元マイクを整え、無線へ日本語で呼びかける。
「神戸港ポートコントロール、こちらシバ・ゼロ。出港許可願います」
無線が返る。
「シバ・ゼロ、出港許可。ご安航を」
ルークは耳と肉球で機関の鼓動を聴き、ルナは医療区画の棚を撫でて確かめる。
「気道、出血、体温、痛み。順番よし。だいじょうぶ、落ち着いてね」
「安全よし、視線は横、拍を合わせる」
アンが小さく復唱した。
舫(船を繋ぎ止める綱)が解かれる。
丸い額が朝の光を受け、港の外へそっと滑り出す。
岸壁では片桐ススムがヘルメットのつばを上げ、指先で小さく挨拶した。
外周警戒のリョーマは、吠えずに喉を震わせる。
「行っちゅうで」
外洋へ出てすぐ、官邸の高杉サチエ総理から緊急回線が入る。
『徳之島近海で不審事案。古い岩屋周辺で“黒い目”の目撃が相次いでいます。直視は禁止。あなたたちの手順で対処を。付言します。過去数週間、人口の少ない離島で不明者が散発。坑道痕らしき画像も確認』
りうが進路を南へ切り、皆へうなずく。
「2つ吸って、1つ止めて、2つ吐く。合わせてな」
続けて、覚えやすいと言い足す。
「合言葉な、吸って・止めて・吐く。“スシ・トメ・ハモ”でも覚えてええ」
アンが即ツッコミを入れる。
「なんで最後“ハモ”やねん」
ルナは笑って注意した。
「“スシ・トメ・ハモ”で覚えるのはいいけど、ハモは骨多いから飲み込まんといてね」
りうは額に手をやる。
「例えの骨、増やしてもうた」
「まかしとき。忘れへん」
アンは前を向く。
胸の奥で拍(呼吸のリズム)が静かにひろがった。
正午すぎ、徳之島の岬が霞の向こうに現れる。
湾口へ入ろうとしたその時、小舟がひっくり返るのが見えた。
「りう、救助手順。ロープは迷わん結びで」
転覆した小舟には兄弟がふたり。
先に弟を引き上げ、兄は浅瀬の岩にしがみついていた。
あんこが見える窓を甲板に映し出す。
光綱はやや強めに点滅。
ルナはランプを少し絞って救急具を肩に、リッチーが無線で落ちついた声を投げる。
「こちらシバ・ゼロ。見えてます。ロープをつかんで、そのまま」
ルークは機関を“気張らんでいい回転”に保ち、
「楽に回るとこでキープや。エンジンは“楽に回るとこ”。うちらもな」
と笑う。
「オレらの朝ごはんも、いまは“楽に噛めるやつ”な」
救助は拍で進んだ。
2つ吸って。足幅の同期。
1つ止めて。確保。
2つ吐いて。引き上げ。
水から上がった弟はぐったりしていたが、ルナの手当で頬に色が戻る。
「体温、戻る。呼吸も2-1-2で安定」
島の人たちが駆けつけ、湯気の立つ茶を差し出した。
湯気を見て、アンは鼻先でちょんと会釈する。
「ほな、1口もろて」
「熱いき気いつけて」
と差し出す手が震える。
アンは息を整えた。
「ふうふう2回、ちょい止め、ふうふう2回。うん、ちょうどええ」
ルークが感心する。
「その呼吸だけでスープ冷めるん、便利やな」
アンは胸を張る。
「応用は大事や」
「安全よし、足元光る、拍を合わせる」
りうも短く確認した。
あんこは茶碗を受け取り、海を振り返る。
「さっき、無線がいっしゅんだけ途切れて…ゲンゾウさんの声、消えて。胸がきゅっとして」
リッチーは短く答える。
「すぐ復帰。ログも正常」
「うん。でも、はやく会いたい」
りうが告げる。
「遮蔽板と反射面、角度プリセットAに。非常時は“横目”で」
安堵は、長くは続かなかった。
つづく
