オーシャン・ドッグスⅡ🐶 第27話:海竜 ガ 勝ツカ、陸ノ犬 ガ 勝ツカ
声が、仲間にも、海の中の半魚人たちにも届くように。
「海は、“誰かひとりの持ち物”ちゃう。船で渡る人も、浜で遊ぶ子も、深いとこで暮らす魚も、島から出たことないセンチネルの人も、みんなの道や
その道を、自分だけのもんやって言うて、怖がらせて、縛りつけて、“昔はうちらが王やった”って自慢してるのが、いちばんの侵略者ちゃうん?」
ニーズヘグの周りの水が、ぐらりと揺れた。
黒い鱗に、ほんの一瞬だけ迷いの影が走る。
アンは続ける。
「恐竜の続きや、進化したやって胸張るんやったら、
“力の振り回し方”も進化させえや。
弱いもんから奪って、怖がらせて、黙らせるだけなんて、それ、ただの“昔のバケモノ”のやり方や。
うちはな、“渡す側”になりたい。怖さで道ふさぐんやなくて、拍と合図で、みんなが通れる道、開きたいんや」

ルークがタツノオトシゴの背で肩をすくめる。
「そうそう。“俺たちのものだ”って叫んでるほうが、
いちばんケチくさい王サマやで。王冠の代わりに、鎖ぶら下げとるだけやん」
リョーマがシャチの背で吠える。
「海を守りたい言うんやったら、まず“働かせとる人間”と“縛られた島の民”を解放せぇや!
守る言うて縛っとるだけのもんに、地球の王名乗る資格はないぜよ!」
ニーズヘグが低く笑った。
その笑いは、岩が砕けるみたいに重い。
「フン…綺麗事ダ。
人間ハ 何度モ、同ジ過チヲ オカス。
海ヲ 汚シ、島ヲ 奪イ、キョウリュウ ノ 骨ノ上ニ、
街ヲ 積ミ上ゲル。
リヴァイアサン ガ 目覚メレバ、四天ノ海竜 ト 共ニ、
ソノ街ゴト…ナギハラウ」
その言葉と同時に、海の奥で何かが寝返りを打ったような気配がした。
遠くの海底から、低い鼓動のような震えが伝わってくる。
ルナが、思わず喉を鳴らす。
「リヴァイアサン…海竜の王…」
りうが短く息を吐く。
「今のニーズヘグ級が、あと3体おるって意味やろな…
笑われへんわ」
アンは、震える足を自分でぐっと押さえつけた。
「リヴァイアサン。そいつのいびき、たしかに聞こえる。でもな、あんたの好きには起こさせへんで」
アンはニーズヘグの単眼をまっすぐに見上げる。
「もし海竜の王がほんまに目ぇ覚ますんやとしても、
その前にうちらが選んだ“今の海”見せたる。
人も竜も、半魚人もイルカも、誰かひとりの“持ち物”やない海や。
その海を壊そうとするなら、相手が恐竜の生き残りやろうが、海竜の王の子分やろうが、“ただの悪さするやつ”として止めるだけや」
ニーズヘグの黒い光が、いっそう濃くなる。
「…ヨカロウ。コノ深ミデ、進化 ノ 違イ ヲ 見セテミロ。
チカラデ ネジフセル ノカ、心ノ拍 トヤラ デ 立ツノカ…海竜 ガ 勝ツカ、陸ノ犬 ガ 勝ツカ」
黒い胴体が大きくしなり、尾が海を叩く。
巨大な渦が生まれ、海亀もマンタもまとめて吸い込もうとする。
つづく
