台湾赴任前に知っておきたい「会社が教えてくれない生活の不安」
前回、台湾赴任で本当にきついのは、中国語より「孤独」だったという話を書きました。
台湾は便利です。ただ、便利だからといって、赴任前の不安が自然に消えるわけではありません。
今回はその続編として、もう少し手前の話を書きたいと思います。
つまり、台湾赴任が決まってから、実際に飛行機に乗るまでの数か月で、何を考えておくと少し楽になるのか。
今回は、会社の資料にはあまり出てこない「生活面の不安」について整理します。
私自身、最初から台湾に住んでいたわけではありません。
2019年頃から台湾の仕事に関わるようになり、最初の半年ほどは毎月のように出張で台湾に来ていました。
その頃は、見るものも食べるものも新鮮で、人も親切で、「台湾なら住みやすそうだな」と感じていました。
ただ、2020年に入り、実際に駐在として台湾に住み始めると、出張で見ていた台湾と、毎日生活する台湾はまったく違うものだと分かりました。
食事、住居、雨、湿気、虫、病気になった時の不安、日本にいる家族との距離感。
そういう細かい生活の不安は、会社の赴任資料にはあまり書かれていません。
会社の人事から渡される資料には、ビザの取り方、住居手当の上限、健康診断の段取りなどは書いてあると思います。
でも、実際に住み始めてからぶつかる細かい不安は、たいてい書いてありません。
これは会社が悪いという話ではありません。
書きようがない部分も多いのだと思います。人事担当者自身が台湾に住んだ経験を持っているとは限りませんし、生活面の不安は人によって感じ方が大きく違うからです。
ただ、書いてあることだけを前提に出国すると、最初の数か月で思った以上にしんどくなることがあります。
この記事では、台湾赴任前に知っておくと少し楽になる生活面のポイントを、私自身の経験も交えながら整理します。
台湾は便利。でも、生活の不安はゼロではない
最初に書いておきます。
台湾は、住む場所としてかなり便利な場所です。
台北であれば、地下鉄も便利です。
コンビニも多いです。
日本料理屋もたくさんあります。
日本の調味料や日用品も、大型スーパーや専門店で手に入ります。
日本語が通じる場所もありますし、翻訳アプリを使えば、日常生活の多くは何とか対応できます。
私自身、出張で初めて台北に来た時は、かなり住みやすそうだと感じました。
ただ、実際に住み始めてから分かったのは、便利であることと、不安がないことは別だということです。
生活はできます。
仕事も何とか回ります。
でも、毎日の小さな違和感や不安は、少しずつ積み重なります。
「台湾は便利だから大丈夫」
「日本から近いから何とかなる」
「親日だから安心」
これは半分正しいと思います。
ただ、それだけでは足りません。
実際に住んでみると、出張や旅行では見えなかった生活の細かい部分が、思った以上に気になってきます。
出張で見る台湾と、住む台湾は違う
出張で台湾に来ていた頃、台湾はとても新鮮に見えました。
食べ物も美味しい。
人も親切。
街も便利。
日本に近いけれど、外国に来ている感じもある。
数日間の出張であれば、台湾料理を食べるのも楽しいですし、街を歩くだけでも新鮮です。
ただ、住み始めると少し印象が変わります。
たとえば食事です。
台湾料理は美味しいです。これは今でもそう思います。
ただ、毎日外食で台湾料理を食べ続けると、人によっては胃腸に負担が出ることがあります。
私自身も、最初は台湾の食事を楽しんでいましたが、脂っこいものが続くとお腹を壊すこともありました。
結果的に、長く住むようになると、普段は日本食を食べることが増えました。
台湾料理は、お客さんが来た時や台湾の方と食事に行く時に食べる、という感じになっていきました。
これは台湾料理が悪いという話ではありません。
短期滞在で楽しむ食事と、毎日続ける食事は違う、という話です。
台湾に赴任する方は、「台湾は外食が便利だから大丈夫」と考えるだけではなく、自分の体に合う食事をどう確保するかも考えておいた方がいいと思います。
生活費は「安い」と決めつけない方がいい
台湾、特に台北の生活費について、よく「日本より安い」と紹介されているのを見ます。
これは、半分本当で、半分そうでもないというのが私の感覚です。
ローカルな食堂や朝食店を使う前提なら、外食費は安く感じることがあります。
地下鉄も比較的安く、日常の移動費は抑えやすいと思います。
一方で、駐在員向けの家賃、日本食レストラン、輸入品、ジム、サブスク、帰国フライトなどを含めて考えると、印象は変わります。
特にここ数年は物価上昇や円安の影響もあり、「台湾は安いと聞いていたのに、思ったほど安くない」と感じる人もいると思います。
水道代はかなり安く感じます。
一方で、電気代は使い方によっては日本とあまり変わらない、または高く感じることもあります。特に夏場はエアコンを使うので、そこは意識しておいた方がいいです。
また、帰国フライトの値段も時期によって大きく変わります。
旧正月や夏休み、年末年始などに日本へ帰ろうとすると、航空券代がかなり高くなることがあります。
赴任前に、「年に何回くらい日本へ帰りたいのか」「ピーク時期に帰る可能性があるのか」は、ざっくり考えておいた方がいいと思います。
「台湾は安いから貯金できそう」と最初から期待しすぎると、実際に住み始めてから少しズレを感じるかもしれません。
病気になった時に、初めて不安が大きくなる
健康な時は、医療のことはあまり考えません。
私もそうでした。
でも、海外で体調を崩した時、不安は一気に大きくなります。
風邪くらいなら何とかなるかもしれません。
ただ、発熱が続いた時、歯が痛くなった時、夜中に体調が悪くなった時、どの病院に行けばいいのか分からないと、それだけで不安になります。
台湾には公的な医療保険制度もありますし、医療水準も基本的には安心できると思います。
ただ、制度があることと、自分が安心して病院に行けることは別です。
たとえば、
・どの病院に行けばいいのか分からない
・何科に行けばいいのか分からない
・受付でどうすればいいのか分からない
・症状を中国語や英語で説明できない
・医師の説明が十分に理解できない
・薬の説明が分からない
こういう不安があります。
私自身、病院については今でも多少不安があります。
大きな病院に行けば安心と思うかもしれませんが、実際には受付の流れが分かりにくかったり、説明が機械的に感じたりすることもあります。
中国語だけでなく英語も十分にできない場合、病院での不安はかなり大きくなります。
そのため、私は現在、病院の予約や健康診断などをサポートしてくれるサービスを利用しています。
費用はかかりますが、いざという時に相談できる窓口があるだけで、安心感はかなり違います。
赴任前には、生活費や住居だけではなく、病気になった時の動き方を先に整理しておくことが大事だと思います。
日本語が通じる病院。
緊急時に連絡できる人。
会社のサポート範囲。
保険の内容。
体調が悪い時に頼れる窓口。
このあたりを事前に確認しておくだけで、不安はかなり変わります。
日本にいる家族との距離も、思った以上に大きい
海外赴任では、自分一人の生活だけではなく、日本にいる家族との距離も大きなテーマになります。
私の場合、台湾駐在が始まった時期がコロナと重なりました。
当時は、日本へ簡単に帰ることができない時期が続きました。
LINEやビデオ通話で連絡は取れます。
だから、完全に距離が離れたという感覚ではありません。
それでも、画面越しに話すのと、実際に会って一緒に過ごすのは違います。
特に、子供の成長をその時期に直接見られなかったことは、今でも少し残念に感じています。
家族と話すことはできても、その場に一緒にいることはできません。
また、日本にいる家族や親に何かあった時、自分はすぐに帰れるのか。
この不安もありました。
海外赴任では、自分が現地で生活できるかどうかだけでなく、日本側に何かあった時にどうするかも考えておいた方がいいと思います。
中国語より困るのは、聞ける人がいないこと
赴任前、私が心配していたことの一つは中国語でした。
中国語がほとんどできない状態で台湾に来て、仕事も生活もどうなるのだろうと思っていました。
ただ、実際に住んでみると、中国語ができないこと自体は、思っていたより何とかなります。
翻訳アプリもあります。
相手も外国人に慣れていることがあります。
台北であれば、英語や日本語が少し通じる場面もあります。
もちろん、中国語ができた方が便利です。
でも、中国語ができないから台湾生活が成り立たない、ということはないと思います。
それよりも効いてくるのは、「これって普通ですか?」を気軽に聞ける相手が生活圏にいないことです。
たとえば、家の設備で何か不具合が出た。
銀行や役所から書類が来た。
家の近くの病院に行くべきか迷った。
店に入ったけれど、何を頼めばいいか分からない。
近所の人との距離感が分からない。
こういう「半歩の確認」ができないことが、地味にストレスになります。
会社の現地スタッフには、仕事の話なら聞けます。
でも、プライベートの細かい不安まで頼るのは気が引けることもあります。
日本にいる家族や友人に聞いても、台湾の現地事情までは分かりません。
SNSで聞くと、いろいろな意見が返ってきますが、かえって迷うこともあります。
この「聞ける人がいない状態」は、赴任直後の数か月でかなり大きな負担になります。
住居選びは、虫・湿気・階数も見た方がいい
台湾に住んでみて、出張では分からなかったことの一つが住居まわりです。
特に、虫が苦手な人は注意した方がいいです。
台湾は気温が高く、湿気もあります。
冬はあまり気にならなくても、夏になるとゴキブリを見かけることがあります。
あとゴミに群がるコバエです。 コバエが本当に多い。
これは私が今でもなかなか慣れない部分です。
古いマンションや低層階の住居では、虫の問題が出やすいと感じます。
住居を選ぶ時には、部屋の広さや家賃だけではなく、建物の古さ、階数、清潔さ、管理状態もかなり重要です。
また、蚊も多いです。
薬や対策グッズは台湾でも手に入りますが、虫が苦手な方は、住む場所を選ぶ段階から意識しておいた方がいいと思います。
台北は雨も多いです。
一年中ずっと雨というわけではありませんが、曇りや雨の日が多い時期があります。湿気も強く感じます。
そして、意外に気をつけた方がいいのが靴です。
私は仕事で革靴を履くことが多いのですが、台湾の歩道や建物の床は、雨の日にかなり滑りやすい場所があります。
日本の感覚で革靴を履いていると、思った以上に足元が不安定になることがあります。
実際、私は台湾で革靴の底を張り替えて、滑りにくいようにゴムを付けています。
それでも雨の日や濡れた床では滑ることがあります。
こういう話は、会社の赴任資料にはまず出てきません。
でも、実際に生活すると、虫、湿気、雨、靴の滑りやすさのような小さなことが、毎日のストレスになります。
赴任前に準備しておくと少し楽になること
ここからは、台湾赴任前に準備しておくと少し楽になることを整理します。
すべてを完璧に準備する必要はありません。自分に関係ありそうなものだけで十分です。
お金まわり
日本の銀行口座、クレジットカード、サブスク、携帯番号、二段階認証は事前に整理しておいた方がいいです。
海外からログインしづらいサービスもあります。
日本の携帯番号を維持するかどうかも重要です。
また、帰国フライトの価格も、通常期と繁忙期で大きく変わります。
年に何回帰りたいかを、ざっくり考えておくだけでも違います。
健康・医療
常備薬は持ってきた方がいいです。
普段飲んでいる薬がある場合は、商品名だけでなく、成分名もメモしておくと安心です。
日本語が通じる病院や、医療サポートの選択肢も事前に確認しておくとよいです。
特に、体調を崩した時に「どこへ連絡するか」が決まっているだけで、不安はかなり減ります。
食事
台湾は外食が便利ですが、毎日外食で自分の体に合うとは限りません。
私は、味噌汁、レトルト食品、簡単なパスタの素、チャーハンの素、インスタント食品など、日本の味に戻れるものがあると安心だと感じています。
台湾でも日本食材は手に入りますが、割高なものもあります。
最初の生活立ち上げ用として、少し持ってきてもいいと思います。
生活環境
住居を選ぶ時は、家賃や立地だけでなく、建物の古さ、階数、虫、湿気、周辺環境も見た方がいいです。
特に虫が苦手な人は、低層階や古い建物には注意した方がいいと思います。
また、台北は雨が多いので、滑りにくい靴、乾きやすい服、湿気対策も地味に大事です。
仕事・通信
日本の携帯番号をどう維持するか。
LINEや各種サービスの二段階認証をどうするか。
本社とのやり取りに使うツールが台湾でも問題なく使えるか。
このあたりは、出国前に確認しておいた方がいいです。
台湾に来てから困ると、意外と面倒です。
メンタル・人間関係
赴任してすぐは、生活を立ち上げるだけで精一杯になります。
最初の数か月は、想像以上に疲れやすいです。
仕事は回っていても、生活面や気持ちの部分で疲れることがあります。
日本にいる家族や友人と定期的に話す手段を決めておく。
現地で相談できる人を作る。
仕事以外で落ち着ける場所を見つける。
こういう準備は、生活用品を準備するのと同じくらい大事だと思います。
会社には聞きにくいことほど、生活に影響する
台湾赴任で困ることの中には、会社には聞きにくいものがあります。
たとえば、休日の過ごし方。
孤独感。
現地での人付き合い。
食事。
病気。
家族との距離。
夜の過ごし方。
日本人同士の距離感。
現地スタッフとの付き合い方。
こういう話は、会社の公式な説明ではあまり出てきません。
でも、実際にはかなり重要です。
特に単身赴任の場合、仕事が終わった後の時間をどう過ごすかは大きな問題です。
孤独感やストレスから、人間関係で無理をしたり、現地での付き合い方を誤ったりする人もいます。
これは表には出にくい話ですが、海外赴任では決して小さな問題ではありません。
休日や夜の時間をどう過ごすか。
自分の寂しさやストレスをどうコントロールするか。
ここを軽く見ない方がいいと思います。
台湾赴任は、便利さだけでは語れない
ここまで読んでくださってありがとうございます。
台湾は、住む場所としてとても良いところです。
私自身、台湾に住んでいて、便利さや人の温かさに助けられたことは何度もあります。
ただ、それでも海外で一人で暮らす不安や孤独がなくなるわけではありません。
台湾は便利です。
日本からも近いです。
親切な人も多いです。
でも、便利だから不安がないわけではありません。
食事が合わない日もあります。
虫や湿気に悩むこともあります。
病気になった時に不安になることもあります。
日本にいる家族のことが気になることもあります。
仕事後に一人で部屋に戻った時、急に気持ちが沈むこともあります。
こういうことは、来る前にはなかなか想像しにくいです。
だからこそ、台湾赴任前には、制度や手続きだけではなく、生活の現実も少し知っておいた方がいいと思います。
この連載について
このnoteでは、台湾赴任・台湾生活について、私自身の経験をもとに少しずつ書いていく予定です。
今回の記事では、赴任前に知っておきたい生活面の不安を広く整理しました。
次回以降は、もう少し具体的に、以下のようなテーマも書いていきたいと思います。
・台湾に住んで初めて分かった、出張では見えない生活の現実
・台湾で病気になった時に、本当に不安になること
・台湾赴任で一番大事なのは、困った時に聞ける人を作ること
・中国語ができなくても台湾生活はできるのか
・単身赴任で孤独にならないために考えておきたいこと
・会社には聞きにくい台湾生活の本音
今はまず、私自身が台湾で経験してきたことを整理しながら、記事として少しずつ残していく段階だと考えています。
今後、記事を何本か書いた後に、台湾赴任前・赴任直後の方向けに、個別相談も始める予定です。
台湾赴任前に何を準備すればいいのか。
会社には聞きにくいけれど、誰かに確認しておきたいことがある。
中国語が苦手なまま台湾で生活できるのか不安。
現地での生活、病気、孤独、家族との距離感について、経験者に一度聞いてみたい。
そういう方に向けて、将来的には個別にお話しできる場も作っていきたいと思っています。
ただし、法律・税務・ビザ手続き・医療判断といった専門領域は対象外です。
これらは必ず、専門家や公的機関、医療機関にご確認ください。
私がお話しできるのは、あくまで「実際に台湾に住んでみた日本人としての体感」の範囲です。
台湾赴任を控えている方、台湾生活を始めたばかりの方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
参考情報
制度や金額は変更されることがあります。
最新情報は各公式サイトでご確認ください。
・衛生福利部 中央健康保険署
台湾の全民健康保険に関する公式情報。
・日本台湾交流協会 台北事務所
在留邦人向け情報、緊急連絡先、医療機関情報など。
・JETRO 台湾
台湾のビジネス情報、就業規制、税制など。
・台北捷運公司
台北MRTの路線、運賃、運行情報など。
・台湾日本人会
台湾在住日本人向けの会員団体、交流・生活関連情報など。
・台北市日本工商会
台湾の日系企業・日本人ビジネス関係者向け団体。
・厚生労働省「こころの耳」
働く人のメンタルヘルスに関する情報・相談窓口。
#台湾赴任 #台湾駐在 #台湾生活 #海外赴任 #海外生活 #単身赴任 #駐在員の本音 #台北生活 #台湾で働く #中国語が苦手
