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【MIL】先人のサブマリンに見倣ってMLBの壁を乗り越えよう【Grant Anderson】

ブルワーズ担当のあなんです。
前回の記事を書いてすぐに出すはずが、気づけば開幕前になってしまいました。

今回はGrant Andersonのブレイクの鍵を考える。


○ プロフィール

生年月日:1997年6月21日
年齢:27歳
身長 / 体重:183cm / 81kg
投 / 打:右 / 右

○ 現状

Andersonはアームアングルマイナス3°のサイドスロー右腕。92mphのフォーシームとシンカー、そして80mph前半のスライダーとチェンジアップを投げる。

ちょっとした円グラフならExcelで十分と気づく
出典:baseball savant

打者の利き手によって投げる球種は大きく異なる。
対右ではシンカーとスライダーのツーピッチだが、左相手にはフォーシームをメインに置いている。


昨季は26.2イニングで29奪三振 / 10与四球 / 防御率8.10 / FIP7.59 / xFIP4.33 / fWAR-0.9。打球指標も非常に悪いことがわかる。

baseball savantより

具体的な課題は対左打者だ。
下の表は左右別の通算成績。

fangraphsより

極端に差が出ているのは与四球率とフライボール率。右打者には制球も良くゴロを多く打たせているが、左打者にはコントロールが安定せずゴロを稼げていない。


また、対右打者にも課題はある。
昨季スライダーのwhiff率は34.6%だった一方、長打率は.522(xSLG.433)で打球角度は27°。シンカーもHardHit%=52%と非常に高く、当たると痛打される特徴があった。


○ 原因と対策を考える……その前に

ブルワーズにはかつてAndersonのようなサブマリンが在籍していた。


現レンジャーズのHoby Milnerホビー・ミルナーだ。

Hoby Milnerは現在34歳の左サイドアーム。17年にフィリーズでデビューし、レイズ、エンゼルスと渡り歩き、20年オフにキャンプ招待選手としてブルワーズとマイナー契約を結んだ。

Milnerはデビュー以降の4年間で74登板、ブルワーズ移籍初年度も19登板にとどまっていた。しかし様々な調整を経て、22年以降ブルペンに定着した。3年間で201試合に登板し(MLB8位)、防御率3.43 / FIP3.16 / fWAR2.7をマーク。ワンポイントから回またぎまでこなすタフなリリーバーとして2度の地区優勝に貢献した。


○ MilnerとAndersonの共通点

Milnerを取り挙げたのには理由がある。現在のAndersonとブルワーズ加入直後のMilnerには共通点が複数あるからだ。

◇ アームアングル

こちらはいうまでもない。お互いアームアングルがマイナスのサブマリンだ。


◇ 逆利きの打者に弱い

Milnerも加入初年度の21年は右打者に苦戦していた。対左の成績が.250/.273/.281(33PA)に対し、対右では.361/.400/.787(66PA)。ゴロを稼げておらず、GB/FBは0.53で被安打22のうちHRは8本だった。


◇ 逆利きの打者にはフォーシームとスイーパー

下のグラフは21年Milnerの対右打者の投球割合。

baseaball savantより

フォーシームとスイーパーが8割以上を占めている。Andersonも左打者相手にはフォーシーム55% / スライダー29%という配分で、フォーシームが第一球種だ。


◇ 腕の長さ

身長はMilnerのほうが7cmほど高い(190cm)が、腕の長さは3cm弱しか変わらない。

baseball savantより


○ Milnerの成績向上の要因を分析

AndersonとMilnerには投球レパートリーから課題まで様々な共通点があった。


ということは、Milnerがブルワーズで改良した点を分析していけば、自ずとAndersonの改善プランが見つかるのではないだろうか。


ここからはMilnerが22年から優秀な成績を収めた要因について分析していく。

1. 投球割合

下の図は各シーズンの投球割合だ。

加入直後までの3年間、Milnerはフォーシームが第一球種だったが、22年からフォーシームの割合を大きく減らしシンカーを多用。そして、全球種バランスよく配分するようになった。

昨季の対右打者にほぼ均等に配分されている。


2. 投球コース

下の画像は対右打者の投球ヒートマップ。
22年以降、フォーシームを除く3球種は外角低めに集まっている。そして、21年まで真ん中中心だったフォーシームはインハイへ。これが徹底されている。

22~24年の各球種の投球コース
左からシンカー、スイーパー、チェンジアップ
フォーシームの投球割合
左:21年 右:22~24年


◇ 意図

投球割合を均等にし、フォーシーム以外の3球種を同じコースに投げるようになった意図はデセプションにあると考えられる。

下のグラフはMilnerの変化量マップ。

22年の変化マップ

全投球の95%を占めるシンカー、スイーパー、チェンジアップの3球種はIVBがゼロ付近に集まっており、特にシンカーとチェンジアップは横の変化量まで近いのがわかる。


具体的な数値はこちら。

シンカー:IVB 0.0 / HB 18.5インチ
チェンジアップ:IVB 1.9インチ / HB 17.1インチ
スイーパー:IVB -1.6インチ / HB 13.4インチ

シンカーと他2つのドロップ量の差はそれぞれ4cm(ボール約0.5コ分)ほどしかない。


また、シンカーとチェンジアップは回転軸も近い。

Spin-Based Movementは0:45離れているが、シンカーのSSWによってObseverd-Movementは0:15に縮まっている


変化量と回転軸が瓜二つで、投球コースも被っている。異なるのは球速でその差は最大10mphほど。Milnerは似通った変化球を同じコース均等に投球することで、相手のミスリーディングを誘ったと考えられる。


実際、対右打者の成績は大幅に改善しており、GB%は前年から+10ポイント以上アップ、wOBAは3割台に抑えた。

対右のゴロ割合
対右のwOBA



○ Milnerに見習おう

ここまでMilnerの飛躍を考察してきたが、このプランをAndersonにも活用しようではないかというのが筆者の考えである。


つまり、Andersonの飛躍のカギは
➀フォーシームを高めに
➁シンカーの多用
➂スイーパーの習得

の3点と考える。

➀フォーシームを高めに

24年の対左のフォーシームのコースがこちら。

ゾーンの中心付近に集まっている。これではサブマリンの特性を活かせていない。彼のフォーシーム自体に伸びはない(IVB:Avg-5.8インチ)が、アームアングルの影響で浮き上がって見える。Milner同様、左打者のインハイ中心に投げることがバリュー上昇への第一歩と考える。


➁シンカーの多用

シンカーは既に投げているが右打者に限定されている。ゴロを打たせるためには左打者にも積極的に投げていくべきだ。AndersonのシンカーはIVB=Avg+9.5インチと大きく沈む。この武器を使わない手はない。


➂スイーパーの習得

こちらはスライダーの改良でもたらされるだろう。現状のスライダーは縦変化34.3インチ(avg.-1.3) と揚力が大きい一方、 横変化7.0インチ(avg.-1.3)とグラブサイドへの変化もないハードなスライダーとなっている。サイドアームという特徴を鑑みると、横変化の大きいスイーパーは重要になるだろう。


Andersonはブルワーズが今オフ獲得した数少ない新戦力リリーフのひとりだ。Milnerの去った今季、変則リリーフ枠として活躍が期待される。





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