#創作大賞、読むぞ 宣言① 『あなたの懸賞金を決めて下さい』みくまゆたんさん
この一文にやられた!
「今から、捜査特別報奨金……つまり、あなたの懸賞金を決めて下さい」
思わずPCの画面を凝視しました。
これは警察の取調官が殺人を犯した容疑者に告げたセリフです。
容疑者が自分の懸賞金を決める? 逮捕されているのに懸賞金?
みくまゆたんさんの『あなたの懸賞金を決めて下さい』
「エンタメ原作部門」にエントリーされています。
犯罪者逮捕のための報奨金、は珍しくありません。現在でもそれを目当てに民間人が情報提供をしています。私も報奨金をテーマにしたストーリーを考えたことがあります。
しかし自分で自分の懸賞金を決める、という設定に驚きました。懸賞金を高くすればするほど逃亡期間が短くできる。逃亡期間が終って犯人が逃げ切れば、おそらく無罪放免になるのでしょう。
━━取調官は、殺人犯の俺に提案する。「今から逃走ゲームを開始します。懸賞金の価格によって、ゲームの難易度は変動します。あなたの懸賞金を決めて下さい」と……。
ハンターは国民全員。逃走ゲームは、懸賞金の金額によって難易度が上がっていく。懸賞金を決めるのは大塚自身と取調官に促され、大塚は戸惑う。
新しいです。この魅力的な設定を使って、これからどんなストーリーが始まるのか、期待に胸が躍ります。
冒頭は、小説の大切なポイントです。「はじめに死体を転がせ」というのは、そのたとえによく使われます。作家はみんな、冒頭に読者を引きつける魅力的な謎や事件を探しています。
そのために奇想と思えるようなアイディを捻り出したり、中盤のシーンをプロローグに持ってきたり、大変な苦労をします(私もです)
それがうまく言ったときは、本当に嬉しいものです。小説の神様にギフトをもらったような気がして、早く先を書きたくなります。
みくまゆたんさんのこの作品は、小説の神様に祝福された冒頭を手にしたのだと思います。
何も伝えてはいけない
主人公である容疑者の心の声です。主人公にも隠している秘密がありそうです。料理し甲斐のある設定に、良質な人間ドラマが絡んでいくことを想像させます。
☆昨年も創作大賞でみくまゆたんさんの作品を読んだ記憶がありますが、読み味が変わっているような気がします。随所にちりばめられた効果的な比喩も合わせて、揺るがない硬質な印象を持ちました。
錫色の床を照らす蒼白い光は鈍い音を鳴らしながら、弱々しく明滅している。
がらんどうの瞳をした取調官
きっと修練されたのではないでしょうか。作品のテイストに合わせて意識的に変えたのなら、それはそれですごいテクニックです
先週『#創作大賞、読むぞ 宣言』をしたのは良いのですが、レビューの一作目にどの作品を選ぶか迷いました。たくさん読んで感想を書きたいので、長編は一話目を読んで、冒頭のつかみについて書こうと決めていました。
ですから昨夜、『あなたの懸賞金を決めて下さい』に巡り会えて本当に良かったです。正にプロローグと第一話が素晴らしかったのです。
今朝、起きた時「よし、今日はレビューを書こう」と思いました。こんなこと、なかなかありません。
続きも読んでしまいそうです……
○今週、冒頭を読んで、これは面白そうだと思った作品です。
東京ウォッチャーズ 雨宮純さん
騙される快楽 松下友香さん
透明なクジラの短い漂流 Y Jungleさん
