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夜の車内から | vol.8

2月の夜は、
音が少ない。

走り出した直後、
タイヤがアスファルトをなぞる音だけが
やけに大きく聞こえる。

ラジオはつけない。
この時間は、
エンジン音と、
ウインカーのリズムだけで十分。

暖房を入れても、
ハンドルの冷たさはしばらく残る。

手のひらが慣れるまでの数分間、
「今日も冬だな」
って実感する。

1月の寒さは、
気合いでどうにかなった。

でも2月の寒さは、
ただ静かに体力を削ってくる。

街はもう、
新年の顔をしていない。

浮かれた看板も、
特別な光もなくて、
生活だけが淡々と続いている。

信号で止まるたび、
フロントガラスに映る自分の顔を見る。

疲れてる、
ってほどじゃないけど、
元気、って言うほどでもない。

この感じ、
2月っぽいな、と思う。

コンビニの前を通ると、
信号待ちのあいだに、
甘いもののことが頭に浮かぶ。

今すぐ食べるわけじゃないのに、
「あとで何か買おうかな」
って考えるだけで、
少し気持ちが緩む。

誰かを乗せて、
降ろして、
またひとりになる。

その繰り返しの中で、
自分の呼吸が
少しずつ整っていく。

話さない時間が多い夜ほど、
考えごとは静かになる。

「ちゃんとやれてるのかな」
「無理してないかな」

そんな問いが浮かんでも、
すぐ答えを出さなくていい。

今はただ、
この道をまっすぐ走る。

今日を終わらせることだけに
集中すればいい。

あさみ

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