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49歳の挑戦|海技士学校の入学試験へ。初めての九州・熊本で見つけた「不便だけど豊かな景色」


3月17日  火曜日

人生の転換点というものは、いつも予期せぬ旅から始まります。
明日はいよいよ、海技士学校の入学試験。
期待と不安が入り混じるなか、私は初めて九州・熊本の地に足を踏み入れました。
今回の旅に、観光を楽しむ余裕はありません。
最短距離で夢を掴むための、ストイックな前乗り記。
羽田空港での冷や汗をかいたトラブルから、目的地・三角(みすみ)で出会ったノスタルジックな風景まで、試験前夜のリアルな心境を綴ります。

羽田空港での焦燥:バスの遅延から学んだ「時間の余白」

旅の始まりは、予期せぬトラブルからでした。
早朝に起床し、意気揚々と高速バスで羽田空港へ向かったものの、道路はまさかの大渋滞。
刻一刻と迫るフライト時刻を前に、車内での私は生きた心地がしませんでした。
ようやく空港に滑り込んだのは、出発のわずか30分前。
追い打ちをかけるように、利用するターミナルが別であることが判明し、慌てて無料シャトルバスに飛び乗りました。
「間に合ってくれ……!」
祈るような気持ちで手続きを済ませ、なんとか機内へ。
離陸してようやく一息ついたとき、痛感したのは「時間の余白」の大切さです。
特に大切な試験に向かう際は、不測の事態を織り込んで動くべきだと、空の上で深く反省しました。

熊本・三角(みすみ)への道:静岡とは違う春の陽気に包まれて



熊本空港に降り立った瞬間、肌をなでる風の柔らかさに驚きました。
地元・静岡とは明らかに違う、汗ばむほどの暖かさ。
コートを脱ぎたくなるような、気持ちのよい春の陽気が私を迎えてくれました。
空港からバスで市街地へ向かい、そこからさらにローカル電車へと乗り継ぎます。
ガタンゴトンと揺られながら目指すのは、今回の目的地である「三角(みすみ)駅」です。
車窓を流れる景色を眺めていると、ふと「旅好き」としての血が騒ぎます。
しかし、今回は自分を律しなければなりません。試験が終われば、すぐに地元へ戻りアルバイトに励む予定です。
これからの学費や生活費を少しでも蓄えること。今の私にとって、それが何よりの優先事項だからです。

決戦の地を歩く:歴史ある校舎と静かな港町

三角駅から宿泊先の民宿までは、約2kmの道のり。
重い荷物を背負い、のんびりと30分ほど歩きました。
その道すがら、明日の決戦の場となる学校へ立ち寄ってみることにしました。
目の前に現れたのは、非常に歴史を感じさせる、風格漂う建物。
その重厚な佇まいを前にして、改めて自分が目指そうとしている「海技士」という仕事の重みを感じ、背筋が伸びる思いがしました。
三角の街は、決して現代的でも便利でもありません。
しかし、目の前に広がる海と背後に迫る山の自然が、不思議な居心地の良さを与えてくれます。
不便さの中に宿る、昔ながらの豊かな街並み。
そんな風景が、試験前の緊張を少しだけ解きほぐしてくれました。

宿での出会い:地元の味と、志を同じくする仲間たち

ようやく辿り着いた民宿。
そこでのひとときが、凝り固まった私の心を温めてくれました。
夕食に並んだのは、地元の海で獲れたばかりの新鮮な魚料理。
一口運ぶごとに広がる豊かな旨味に、「あぁ、熊本に来たんだ」と実感が湧き、移動の疲れが溶けていくようでした。
また、同じ宿には私と同じく、明日の試験を受ける方々が何人もいらっしゃいました。
初対面ながら、目指す場所が同じ者同士。
自然と会話が弾み、試験の内容やこれまでの経緯など、貴重な情報交換をすることができました。
一人で戦っているのではない。
その事実に勇気をもらい、孤独だった緊張感は、心地よい連帯感へと変わっていきました。

試験前夜:あと1日、静かに闘志を燃やす

夕食を終え、今は部屋で静かに心を整えています。
観光はまたいつか、海技士としての第一歩を刻んだあとの楽しみに取っておこうと思います。
「試験日まで、あと1日」
美味しい食事と、心強い仲間との出会い。
これらを糧にして、明日の試験と面接に全力を尽くします。
明日の今頃、やりきった笑顔でいられるように。静かに闘志を燃やす、熊本の夜です。

【結びに代えて】

ここまで読んでくださったあなたに、心から感謝いたします。
これは「完璧な誰か」の物語ではなく、試行錯誤を繰り返す一人の人間の、現在進行形の記録です。
第1話から順に読み進めていただくことで、単なるエピソード以上の「物語としての重み」を感じていただけるかもしれません。
あなたの「スキ」や「フォロー」が、暗い夜道を照らす灯火のように、この連載を続ける勇気をくれます。
その温かな反応のひとつひとつが、私がこの連載を書き続けていくための、何よりの原動力になります。

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