【添乗員】また会いたいと思ったから『アディオス』とは言わなかった
この仕事をしているとたくさんの人と出会う
でも『また会いたい』と思える人はそう多くはない
※ちなみに
adiós(アディオス)/さようなら、長い別れ
Hasta luego(アスタ・ルエゴ)/またね、また会える
Mr.アントニオ
今回スペイン添乗の10日間のうち、3日目のマドリードから6日目のマラガ空港までの4日間スルードライバーとしてお世話になった
3日目の朝、ホテルの前に配車されたバスを見つけて挨拶をしに行くとアントニオさんは笑顔でバスから降りてきた
翻訳機を取り出し、わざわざ日本語に直して
『はじめまして。あなたのスペインの日々が良いものとなるよう祈っています』と伝えてくれた。
また、お客さんの中で日本から持参した扇子とお菓子をアントニオさんへ渡した方がいた
すると翌日、彼のお母さんが扇子を持ってにっこり微笑んでいる写真を見せてくれ
『母が喜んでいました、ありがとうございます』
とスマホの翻訳機の画面を見せてくれた
そして、お返しにとお菓子を買って私やお客さんへ振る舞ってくれた
『これはこの街の銘菓です』
『サービスエリアで皆さんはカフェを飲んで休むことができます』
『休憩は何分取りますか?』
『明日のホテル出発は8:00ですね』
私たちは全てのやり取りを翻訳機を介して行なった
アントニオさんはスペイン語しか話せないかもしれない、私がスペイン語を話せたらもっとスムーズなコミュニケーションが取れただろう
しかし、私はそれが負担だとは感じなかった
最初はもちろん英語が通じず戸惑った
しかし気付けば翻訳機など気にならなくなっていた
笑顔や気遣いが言葉以上のものだったからだ
それほど、いつも笑顔で見守ってくれていた
また、セビリアにて観光終了時間を間違えて伝えてしまいアントニオさんの昼食時間が無くなってしまったことがあった
あまりの申し訳なさに観光後グラナダへ戻る道中のサービスエリアにてランチをご馳走させて欲しい、と伝えると
『気にしないで。綾子はエスプレッソを飲んで休んでください』
限られた休憩時間の中、ひとり急いでサンドイッチを食べるアントニオさんの背中を見て苦しい気持ちになった。
それでも彼は笑顔のままだった
サービスエリアを出発しバスはグラナダへ向かう
涼しいバス車内、お客さんは皆お昼寝をしていた
私はバスの中でもサングラスをかけたまま
気付いたら涙がぽろり流れた
セビリアでも英語ガイドだった、思えばこの日は朝からプレッシャーで余裕がなかった
だから間違えた?不安と疲労が重なった?
「セビリアが終われば後は日本語ガイドしか来ない、今日が山場だ」
ツアー中において最後の英語ガイドを終えプレッシャーから解放され少しホッとしたのかもしれない
何にせよだ
こんなことで泣くなよ!自分のことしか考えてなかった!バカタレ!
これ以上涙が出ないようグッと堪えた
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『おはよう』
『ありがとう』
アントニオさんの日本語の挨拶は1日1個ずつ増えていた
6日目、アントニオさんのバスが最後の日
『こんにちは』
またひとつ新しい日本語を覚えてきたようだ
この日は朝から『こんにちは』のアントニオさんの挨拶でスタートした
じゃあ私たちもスペイン語のボキャブラリーを増やしましょう!と、長いバス移動の中でお客さんと一緒に挨拶や様々な場面で使える即席スペイン語講座を行なったがこれが盛り上がった
『セルベッサ、ビールです!』
『セルベッサ!』
『ドンデ・エスタ・エル・バンニョ
トイレはどこですか!』
『ドンデエスタエルバンニョー!トイレー!』
運転中、時々「うんうん」うなずくアントニオさん
『ヴァモス!カピタン!(出発!隊長!)』
これは毎回のバス発車時の定番の号令になった
3日目のマドリードでの出会いから始まり、コンスエグラ、コルドバ、セビリア、グラナダ、ミハスと順調に観光地を巡り、いよいよバスはマラガ空港に到着しアントニオさんとお別れの時が来た
バスから全員が降りた後、お客さん達が『グラシァス、アディオス!』と言ってアントニオさんへお礼を伝えていた中、私ひとりだけ
『ムーチャス、グラシァス、アスタ・ルエゴ!』
そう伝えて握手をして別れた
『アディオス』はどうしても言いたくなかった
こうしてしばらくの間、全員でアントニオさんへ手を振り続けた
『良い人だったね、何だか寂しいね』
皆が口々にそう言った
涙もろい私はやっぱり少し目が潤んだ
サングラスをかけようか迷った
ところで私のサングラス姿は西部警察が過ぎるので、断腸の思いで諦めた
その後もツアーは続き、後半戦のバルセロナへ
サグラダ・ファミリアでは思いがけない出来事もあったり、今回も天気やお客さんに恵まれ、長いようであっという間の10日間の旅は無事に終わった
こうしてひとつツアーを終えて思うこと
初めての国だから失敗しても仕方ない、そう思ったことは一度もない
アントニオさんをはじめ、各地ガイドさん、ローカルスタッフさん達にもたくさん助けられた
人に親切にされたら自分もその親切をまた誰かへ返せる人間でありたい
振り返るとそんな10日間だったように思う
アントニオさん
私にとって、あなたはまた会いたいと思う1人だ
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写真はセゴビアのローマ水道橋
日本を出発してほぼ24時間後
初スペイン、最初の観光地にしていきなり英語ガイド同行でこの街を案内した。
プレッシャーで目は血走っていたろう、おかげでアドレナリン全開
途中からノートを閉じ、かばんの中にしまっていた
脳内セゴビア情報一気出しで話していた
観光を終え、お客さんとジェラートを買って食べながらバスへ戻った
スペインで最初に食べたもの
チョコのジェラート
『美味しいねぇ〜』
私もお客さんも疲れていた
長い移動と、着いて早々の暑い中の観光
ローマ水道橋を振り返りながら『しかし、よく勉強してるねぇ!』とお客さんに褒められた
6月の図書館ごもりが報われた瞬間だった
ジェラートが美味くて仕方なかった
P.S.ちなみに、その後のホテルでの夕食にて
ドリンクの数やメインメニューの注文をことごとく間違えた
うん、ここが疲れのピークだったみたい!
ではまたsee you around
