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森の中のアトリエ / Part1 第17話 懸造りの木造体育館の設計(1,368文字)

森の中の自邸の工事は順調に進んでいる。

着工後2ヶ月後構造体の架構は完了し、屋根の下地や屋根材も葺き終わった。
年末にはサッシや建具枠が取り付けられ、外壁工事に入るが、周囲が林で湿気も多いし平屋なので、耐久性を考えると無機質系材料が望ましいが..。

「慎ちゃん、屋根は金属でしょうけど、外壁はどうするの..」
4ヶ月前に、慎が仕様書を作成していると、横から耀子が尋ねた。

「うん、何せ湿度が1年中高いから煉瓦造の腰壁の上を木造にして、周囲を一度整地して防湿シートを引いて、玉砂利敷きにしてようかと..」
「煉瓦造の腰壁..」耀子は、木造住宅のプロであるが、慎の意図が分からない。

「本当は、1階はRC造で2階を木造でも、と考えたが。それだと軽井沢の山荘になっちゃうし..」
「そうね、吉村先生のコピーじゃ..慎ちゃんの家にならないわね..」
「所で、最近忙しいの..帰りが遅いときがあるわよね..」

「うん、北条の体育館がね..」と口から嘘を吐く。実は、果耶と逢い引きし、ラブホに行っていたのだが、流石にそれは耀子には、言えない。

一時は果耶が精神的に辛い状態で、相談してきたことを、全て耀子に話そうかとも思ったが、依然と違い、果耶は結婚しており、ダブル不倫になるので、それも言えない。

ある意味、進退窮している状態である。とは言え、泣きついてくる果耶の苦境を知るにつけ、突き放すことも出来ない慎だった。

先週も呼び出され、野田まで行って何時ものホテルに行っていた。
「ねー、あたし、どうしたら良いと思う..」
「一度、京平君ときちんと話してみたら..」
「でも、仕事で忙しく、帰りも遅いから..」と果耶。
「子供はどうするの..」
「うん、作るつもり..」
「で、こうして僕と会っている訳..」
「そう、変よね..でも、慎ちゃんに逢わずに居られないの..」

そう言われると、自分が果耶の旦那の京平よりも、良いと言われているようで、優越感を感じてしまう。
浮気をする原因の一つはそういう事なのだろう。相手のパートナーよりも良いとか、言われると優越感を感じて、それが継続していく。
不倫をしてしまう理由だが、当然しない人には理解不能だ。


そんな中で、北条の体育館の実施設計が進んでいる。
斜面に立つので、床から下の構造は京都・清水寺の舞台「懸造り(かけづくり)」と呼ばれる建築様式で作ることにした。この構造は、急な斜面や段差のある土地に建物を建てる際に用いられる日本独特の技術で、
清水寺の場合の特徴は、4つある。
・釘を使わない構造: 舞台を支える柱は、釘を一切使わず、木材同士を「貫(ぬき)」と呼ばれる横木で接合する。

  • 柱の数: 舞台を支える柱は78本あり、本堂全体では172本の柱が使用されている。

  • 高さ: 舞台の高さは約13メートルで、4階建てのビルに相当する。

  • 素材: 柱にはケヤキ材が使用されており、1本1本が非常に太く、耐久性に優れている。

この技術は、地震や風などの自然災害にも強い耐久性を持つので、その上に、体育館の主構造を載せることにした。
小屋組も送り出し梁とした。これも構造事務所が頭を悩ませたが、なんとか完成し、
実施設計は90年暮れには完了した。

そしてプライベートの懸案だった果耶との関係は、彼女の妊娠で再度終わった、二人は再度別れた。

 ^6-27@1990年9月^91年8月

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