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[恋愛小説]1981年の甘い生活...4/スカーレットのフィアレディ

美愛は目の前の車を見て驚いた。優樹が友達の大工さんから格安で譲り受けた車は、フィアレディZ 2by2(GS30型)だった。今朝引き取りマンションの前の駐車場で二人は赤いZを見ている。

スカーレットと黒のツートンに再塗装されおり、ボンネット中央の凸はつや消しの黒という、派手な車だった。

美愛「えっ…これって。」

優樹「どう?いいでしょ。」

美愛「派手ね。そうね、かっこは良いけど。運転できるかな?」

優樹「マニュアルギアだけど、少し練習すれば、大丈夫だよ。」

美愛「マニュアルか…」

優樹「これから奥多摩に行こう。」

美愛「分かった、Gパンに履き替えてくる。」

美愛は、最初Zを買いたいと言った優樹は、何を考えているんだろうと思った。青のアコードを購入してまだ1年も経っていないのに。
そう確かに、友人の慶子からも、現場監督の人はストレス解消で良い車を乗る人が多いとは、聞いていたが…。

多分優樹もストレスを抱えているんだろうと思った。

値段も値段なので、強いて反対はせず黙っていた。

優樹が運転するスカーレットのZは奥多摩有料道路のコーナーをスムーズに旋回していく。美愛は、窓を全開にし、長い髪をそよがせている。

季節は初春だが、奥多摩は日陰にはまだ日陰に雪が残っている。

優樹「寒くない?」

美愛「少しね、でも気持ちいいわ。」

優樹「流石にZだね、よく走るよ。L型6発の頭は少し重いけど。」

美愛「これ幾らしたの?」

優樹「幾らだと思う。」

美愛「100位?」

優樹「あはは、その十分の一だよ。」

美愛「うそー。」

優樹「来週からテニスはこれで行こう。」

美愛「運転代わって。」

青梅に転居して、美愛は銀行を退職し、東京の信用金庫に勤めだした。やはり、金融機関が肌に合っているらしい。その点、優樹は門外漢なので、食事の時は、週末のテニスや青梅に来てから始めたトレッキングの話題になる。

この頃から、美愛は優樹が趣味で始めるものに、必ず同行し、一緒にやり始めた。
それが、楽しいことを優樹一人だけにさせるのは、勿体ないと思っているのか、狡いと思っているのか、それとも一人で出かけさせると危ないと思っているのかは、まだ分からなかった。

この頃になると、優樹の周りに女の影がふと近づくことに気が付いた、そしてそれは優樹の持つ何かが彼女達を引き寄せるということが、何となく分かってきた。
そう言えば、自分もそうだったので、納得したが…。事実、危ないことも何度かおこることもあったのだが、美愛のそれは間違いでは無かった。

油断も隙もない人。

その後の二人の趣味を列記すると、ドライブ、テニス、、ワンちゃん(シェルティ)、ウォーキング、トレッキング、そしてロードバイクと多彩だ。

私生活は、順調だったが、仕事にはなかなか手強かった。転職したDハウスは、元々プレハブ住宅で大きくなった一部上場企業だが、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の一般建築も受注していた。

今は八王子の駅前で9階建ての事務所ビルの新築工事を一人で担当していた。

昨年12月から着工しており、現場の工程が遅れていた。3月完成予定だったが、5月頃まで延びそうだった。
この頃から、バブルが始まって、職人の段取りが段段難しくなってきていた。
その上、いろいろと初めての工事も多く苦労していたが、東京支店からの応援はほぼ無かった。孤立無援の現場だった。

苦労したが、漸く完成し、通常業務に戻った。
驚いたことに、それまでの現場はまるで楽勝だった、それくらい簡単に思えた。
これが一山越えた風景だと、知った。

美愛の転職した信用金庫は多摩地区に支店も多く、今は立川支店に通勤している。だいぶ慣れてきたが、やはり二人で働くのは、大変だ。
優樹も忙しいしので、家事の手伝いをお願いねとも言えない。

優樹が楽しそうに、Zを運転するのを横から見ながら、そのうち何処かへ泊まりで旅行しようと考えていた。

それが、1984年2月の出来事だった。




[恋愛小説]1981年の甘い生活 各話のタイトルとリンク 一覧

1.Dolce Vita 甘い生活
2.根津神社で
3.青梅での生活
4.スカーレットのフィアレディ
5.小淵沢にて...
6.ハネムーンはNZ その1 秘められた目的
7.ハネムーンはNZ その2 美愛の憂鬱
8.ハネムーンはNZ その3 美人のツアコン
9.シェルティとボルボ
10.嬉しい知らせ

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