見出し画像

[恋愛小説]1978年の恋人たち... 7/優樹の実家にて

美愛を優樹の実家へ、連れて行くのは、9月初旬になった。
8月は盆月だから、駄目だという父親の意向だった。どこまでも、昔気質の親だった。そんな、親が簡単に、この結婚を認めるとは思えなかったが、そこは乗り越えないと、美愛と一緒になれない。これも試練だと思った。

優樹の実家は、常磐線で上野駅から1時間強だが、昼間の時間帯の運行本数は1時間に2本しか無かった。親に会いに行くこの日、いつもの駅は、どこかの知らない駅のように思えた。通い慣れた実家への道も、美愛と一緒に歩くと、初めてのように感じた。

家に着くと、いつもの和室では無く、応接間と言われていた洋室に通された。美愛も事故で入院していた時に両親に会ってはいたが、さすがに緊張していた。

優樹はこれからのこと、どうしていきたいのかを両親に話した。
両親は黙って聞いていた。その場では、どうこう言う話は、無かった。

帰る時、玄関での挨拶は、普通だったので、少し安心した。

隣町の喫茶店に二人で行った。緊張が解けた二人は、ほっとするというより、これからのことを考えると、不安にもなった。が、もう二人の道は一つしか無いのだ。

中野区南台の桃花荘に帰り、自宅に電話すると、母親が出た。

母親「あれから、おとうさんと話したけど、やっぱりまだ学生だし、卒業してからに、したら。」と、言われ両親が反対しているのでは無いと分かり、優樹はほっとした。
母親「良い子だと思うよ。優樹にしたら上出来よ。」と言われ、何かこみ上げてきた。
母親「あんたが、しっかりしないとね。」と最後は、締めてきた。

これで、二人の親に将来の話はした、後は自分が社会人になり、一緒暮らせるようになれなければ、と自分の肩に掛かってくるその重さを意識せずにはいられなかった。

これも、後で分かったことだが、母は、20年前に優樹の妹となるはずだった女の子を流産で無くしていた。だから、実の娘のようにも思える美愛にそんなに悪い気持ちは持っていなかった。

それが、1978年9月初旬の出来事だった。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集