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私の物語は物語のようには始まらない

静寂は
周りの小さな物音を吸収する
特別な空間
何かがひっそりと生きている

少し埃っぽい湿った匂い
しばらく使っていなかった図書館
窓を開けると
涼風が飛び込んできて
秋の訪れを感じさせる

ただいま

この空間は
私を待っていてくれた

夏休みの間
学校の図書館は閉館していた

ただいま

扉からすぐ近くの
お勧めコーナーから
一冊の本を手に取った
本を選ぶときは直感で選ぶ
私の選び方はいつもそうだ
しかし
今日はこれが読みたいと
前から思っていた

懐かしむように
いつもの場所に座る
その椅子も
私が来るのを
待っていてくれたようだ

ゆっくりとページをめくる

物語の森に
たちまち引き込まれてゆく

森の匂いがした。秋の、夜の時間に近い時間の森。風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。

「羊と鋼の森」冒頭 宮下奈都

調律師板鳥との出会いによって運命は回り始める。
導かれるように調律師になった外村。音と自分自身に真摯に向き合う日々。悩み、迷いながらも調律師と成長していく。個性的な先輩たちや才能豊かな双子の少女との出会いは外村の人生に大きく関わり、調律の森の奥へさらに足を踏み入れてゆく。

あらすじ


うっとりと
夢から覚めたように
顔を上げる
素敵な表現とストーリーに
しばし溺れる


中学3年の夏休みが終わった

森から抜け出し
現実を見る

私は何になりたいのだろう
ずっと問い続けてきたが
まだ答えが出ない
私にも
私に合った森があるのだろうか

運命の出会い

そんなのを待っていたら
おばちゃんに
なっちゃうかもしれない

運命の出会いは
自分から求めて動き出すものだ

明日は
担任の先生との面談がある
進路の相談

私の物語は
物語のようには始まらない

だから
始めるしかない
物語を始めるうちに
きっとキャストが集まってくる
あらすじは
   自分で作っていく
ハッピーエンドも
   自分で作っていく

今の
そしてこれからの私が
私の物語のストーリーを作る
主人公は私


日差しは傾きかけている
下校の時間を
知らせる音楽が鳴り始めた

ひぐらしが最後の力を
ふり絞るように鳴いている
季節が
移り変わってゆく

図書室の森に目覚める物語
まわるまわるよ運命の輪



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