花柄のワンピースを着るように文章を書いていた

カタコトカタコト
母の使うミシンの音が心地よい
縁側は
ぽかぽかの日だまりは
私ひとりのものだった
その音を聞きながら
縁側で絵本を読むのが好きだった

カタコトカタコト
出来上がったワンピースを
母が両手を伸ばして
こちらに見せた
花柄のワンピース
それは
お出掛け用の
私のワンピースだった

手を通すと
裾がふんわり翻り
おすましの私が鏡の中にいた
絵本の中のお姫様のような
ワンピース
薔薇の花柄のワンピース

それは
女の子を王女さまに変身させる
ワンピースだった

うふふ

笑みが溢れる

そのワンピースを着たときは
私はちょっと大人の気分
お姫様になった気がして
綺麗な言葉や所作を心がけた
ちょっと背伸びした私

うふふ
いつもの
ガハハという笑いは封印


大人になった私は
もう薔薇の花の
ふわふわのワンピースは
気恥ずかしくて着られない

でも
こうして文章を書くときには
背伸びする
踵をあげる
美しい言葉を使いたいと思う
それは
あのワンピースを着た
何処か
よそいきでおすましの気持ちに
似ていると思う

あの時の少女はもういない
しかし
少しはにかんだような
着飾った私が文章の中にいる

ガハハは封印

おすましの私

完璧な文章などない
おすましの私が
ぎこちなく
今日も言葉を紡ぐ
ガハハは封印
うふふと笑いながら
言葉の海に漂う

遠い記憶の彼方に
カタコト鳴らす母のミシンを
思い浮かべながら
言葉の海を泳いでゆく


カタコトと言葉を紡ぐ少女かな
花柄のワンピースには魔法の力




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