森の月|虹色創作部
私にはお気に入りの空がある。それは広がってもいないし、青空でもない。 小さく切り取られて、少し霞んでいる。
いつからだろう。 考え事をしたくなったときにここに来て空を見上げる。
家から歩いて十分ほどの小さな森。昼間は散歩する人もいるけれど、夜は誰も来ない。この時間、木々の間から見える月だけが、私がここにいることを知っている。
一生懸命になって、精一杯やったつもりだったのに、結果は違った。周りからも誤解された。 そんな思いを抱えて、家を出て。気がつくとここにいた。
月明かりが木の葉の隙間から差し込んで、足元を薄く照らしている。風が吹くたび、光の模様が揺れる。
子供の頃、この森が怖かった。夜中に一人で来るなんて、考えることもしなかった。 「夜に森に行ってはいけないのよ。妖精があなたを誘うから、帰ってこれなくなるわよ。」 母がそう言っていたのを思い出す。子供の私は本気でそれを信じていた。
今でも時々、木の影が動いたような気がして振り返ることがある。でも、そこには何もない。風で揺れる枝があるだけ。そうわかっていても、一人ではないような気がする夜がある。それは不安をかきたてる恐れではなくて、いつしか甘いささやきに変わっていた。
月を見上げながら、私は考える。自分がしたかったこと、あの人の言葉、手に入れたもの、零れ落ちたもの。
答えは見つからない。でも、ここにいるだけで心が少し軽くなる。
風が止まり木々のざわめきが止んで、森に訪れる静寂。月だけが変わらず、そこに浮かんでいる。
迷った時、疲れた時、ただ一人になりたい時。
私だけが知っている、この空と月。
虹くりっぷ@虹色創作部さんの素敵な企画です。
※厳密にいうと、この作品の中では名月にも読書にも言及はしていないのですが、イラストが素晴らしかったので使わせていただいています。
🧡 スキ 🤝 フォロー 💬 コメント…のいずれかでもいただけたら、
とても励みになります
