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友達のままで|恋人になれない

「ごめん」

私がそう言った瞬間、彼の表情がこわばった。
彼は目を逸らすと小さく頷いて、「そうだよね」と呟いた。

大学から六年間、私たちは仲の良い友達だった。

同じゼミで、同じ映画を見て、同じカフェで勉強した。就職してからも、月に一度は会っていた。お互いが好きな人の話も、仕事の愚痴も、何でも話せる関係だった。

昨夜、彼から電話があった時、嫌な予感がした。
「大事な話がある」
いつもと違う真剣な声だった。

そして、今日、会った。

「ずっと君のことが好きだった。友達でいることに限界を感じている」
彼の真剣な表情を見てはいられなかった。

嬉しくないわけではなかった。彼のことは好きだ。けれど恋愛感情と呼んでいいかはわからない。

彼とキスすることを想像すると、甘美な香りとは別な恐れを感じた。

「私たち、友達だからうまくいってるんだと思う」
そんな言葉しか言えない自分が恥ずかしかった。

このまま彼と付き合って、もし別れることになったら?
六年間の友情も、すべて消えてしまうのだろう。
二人が恋人になったら、今のままではいられない。

他の男性の話はできない。彼も私以外の女性を見ることができなくなる。

なにより、私は恋愛が下手だ。
過去の恋人たちとは、結局うまくいかなかった。理由ははっきりしないけれど、いつも相手が離れていってしまう。

彼まで失いたくなかった。

「時間をかけて考えてみない?」
彼はそう言ってくれたが、私は首を振った。
「ごめん。」

彼は寂しそうに笑った。

「そうか。でも、これからも友達でいてくれる?」

その問いが、一番つらかった。
このあと、彼は私といることが苦しくなるかもしれない。

「もちろん」
そう答えたけれど、私は今までと同じでいられる自信がなかった。

家に帰って、一人になると、こらえていた涙があふれた。

彼を傷つけてしまった。そう思う一方で、告白してくれた彼が恨めしかった。

今日のやりとりが行きついたのは、恋人同士にならないということだけではなかった。
失うことを恐れた結果、私はすべてを手放してしまったのかもしれない。

これまで何度も失恋をした。眠れない夜も幾度も過ごした。
けれど、自らノーと言った今日は、かつてないほどの痛みが鋭く私を貫いていた。





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#共創

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