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反省の意味|カフェ・フルエンタラ

柔らかな雪が静かに降る冬の午後。

予備校の自習室をため息とともに後にした Shine は、大きなリュックを背負い、重い足取りで駅前の雑踏を抜けていた。模試の結果が返ってきたばかり。英語は前回より5点下がっていた。

「また、か…」
かつては得意だった英語。高校時代は洋楽の歌詞を訳して楽しんでいたのに、今はただ問題を解くための科目になっていた。一年前、第一志望に落ちたのも英語のせいだと思っていた。

雪道をぼんやり歩いていると、知らない路地に迷い込んでいた。小さな赤い看板が目に入る。「カフェ・フルエンタラ」。

寒さから逃れるように、ドアを開けた。
温かな空気と珈琲の香りが Shine を包み込んだ。カウンター席に座ると、年配のマスターが静かに微笑んだ。
「いらっしゃい」
無言でメニューを差し出されたが、Shine はただため息をついた。

「何か、あったのですか?」
Buddy と名札のついたマスターは、Shine の前にホットチョコレートを置きながら問いかけた。

「浪人生なんです。また模試で失敗して…英語で点を落としました」
チョコレートの甘い香りに誘われて、Shine は少しずつ言葉を紡ぎはじめた。

「高校の頃は英語が好きだったのに。受験になって全然ダメで…昨年も落ちたんです」
「そうか」
Buddy はグラスを拭きながら、ただそれだけを言った。
「英語の先生のせいかな、とか。問題の出し方が悪いとか。でも、結局は自分が悪いんですよね…」

カウンターの端では、年配の女性が洋書に没頭していた。集中して読んでいる姿に、Shine は昔の自分を思い出した。楽しみながら英文を読んでいた日々を。

「反省って難しいよね」
Buddy は静かに言った。

「どういう…意味ですか?」
「反省は未来のための地図。後悔は過去の中の迷路」
マスターは小さな砂時計をカウンターに置いた。砂が静かに落ちていく。
「この砂時計の砂は、全部で何粒あると思う?」
Shine は首をかしげた。
「…わかりません」

「私も知りません。でも、一粒一粒は確かに流れている」
Buddy は砂時計をひっくり返した。
「反省は、どの砂がどう流れたかを見ること。後悔は、流れた砂を数えようとすること」

冷たい窓ガラスに、Shine の姿が映っていた。英語の教科書を開いていた小学生の頃。洋画のセリフを真似していた中学生の頃。そして今、ここにいる自分。
「責任を取るのは大切。でも、全てを自分のせいにする必要はない」
マスターは続けた。
「英語を好きだった気持ちは、まだどこかにあるのかな?」
Shine はホットチョコレートを一口飲んだ。
「…あります。きっと」

カウンターの上に置かれていた洋雑誌の見出しが目に入った。"Second chances are first steps"(セカンドチャンスは最初の一歩)
「反省は終わりじゃない。始まりなんだ」
Buddy の言葉が、静かに胸に沁みた。

店を出るとき、Shine は背中が少し軽くなったことに気づいた。
雪は止み、夕暮れの空に最初の星が瞬いていた。
リュックの中から英語の参考書を取り出してみる。
久しぶりに、楽しむつもりで一ページめくってみようか。




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