鬼が島|3つのお題に空想のひらめきを
鬼ヶ島は、静かだった。
桃太郎は去った。
鬼を倒し、宝物を持って。
鬼たちの家の火は消え、
残った鬼たちも
散り散りになった。
小さな鬼が一人、
島をさまよっていた。
桃太郎との戦いで父を失った。
父は、いつも大きな声で笑う赤鬼だった。
人間の島で見つけたという果物を、
半分こして食べたことがある。
甘かった。
「とうさん」
呼んでも、返事はなかった。
島のはずれに、父とよく行った岬がある。
そこに小鬼は、花の種を持って行った。
赤鬼が、人間の島から持ち帰ったものだ。
「いつか花を咲かせよう」
そう言って笑っていた父を思い出していた。
小鬼は、その種を、土に埋めた。
涙が、ぽたぽたと落ちて、
土を濡らした。
何日も、水をやった。
やがて、芽が出た。
鬼ヶ島に、花が咲いた。
「きれいだなぁ」
花が咲いたのを見届けた小鬼は
島を出る決心をした。
小鬼が咲かせた花は、人間の島では、
ありふれた花だった。
でも小鬼が初めて見たその花は、
鬼の涙で育った、世界で一つだけの花だった。
片桐みかんさんの企画に参加します。
今回利用させていただいたお題は
「鬼ヶ島に咲いた花」
▼鬼関連では、こんなショートショートも書いています。
よろしければ、お楽しみください。
