伝わらなかったメッセージ|カフェ・フルエンタラ
秋の夕暮れ、落ち葉が舞う公園のベンチに座り込んだMisaは、スマホの画面を何度も見つめ直していた。
メッセージアプリには送信済みの英文が残っている。
「Thank you for everything. It meant a lot to me.」
オンライン英会話の最終日、アメリカ人講師に送った感謝の言葉。彼女の笑顔が、この一年の支えだった。でも、返事はまだ来ない。既読マークもついていない。
「伝わらなかったのかな。」
街灯が灯り始め、足早に家路を急ぐ人々を眺めながら、Misaは立ち上がった。ふと見上げると、小さなカフェの灯りが目に入る。「カフェ・フルエンタラ」。
店内は静かで、温かな香りに包まれていた。カウンター席に座ると、銀髪のマスターBuddyがそっとコーヒーを差し出した。
「ありがとう。」
カップの温もりに手を添えながら、Misaはスマホをテーブルに置いた。画面には依然として返信なしのメッセージが表示されている。
「言葉って、届かないことがあるのよね。」
つぶやくように言うと、Buddyは静かにうなずいた。
「Words are like autumn leaves.」
(言葉は落ち葉のようなもの)
窓の外を指さす彼の視線の先には、風に舞う落ち葉が見えた。
「Some reach their destination, some take a different journey.」
Misaはハッとして言葉の意味を理解した。落ち葉は目的地に届かなくても、大地を彩り、やがて土に還る。目に見えないところで、何かの養分になっている。
コーヒーを飲み終えた頃、スマホが小さく震えた。講師からではなく、同じクラスの生徒からのメッセージだった。
「先生、事故で入院したんだって。でも、みんなからのメッセージをプリントアウトして、枕元に飾ってるって聞いたよ」
Misaの頬を一筋の涙が伝った。
「伝わる道は、一つじゃない」
Buddyの静かな言葉が胸に染みた。
