図書館の席|片想い文芸部
毎週金曜日の午後、私は決まって図書館の同じ席に座っている。
三ヶ月前から、この習慣は続いている。
窓際の角。静かで、外の緑も見える。
私の斜め前の席には、毎週同じ時間に座る男性がいる。
彼はいつも経済学の専門書を読んでいた。時々、ノートに何かを書き込んでいる。研究者か大学院生なのだろう。
私たちは一度も話したことはない。でも、同じ時間に同じ場所にいる、それだけで何か特別な縁を感じていた。
たまたま目が合ったとき、彼が微笑んでくれたように思った。
彼が咳をすると、心配になった。彼が難しい顔をしていると、何の研究をしているのだろうと想像した。
ある木曜日。明日は勇気を出して話しかけてみようと決心した。
でも、その日、彼は来なかった。翌週も来なかった。
二週間後、図書館で偶然、司書の人の会話が耳に入った。
「あの研究室の人、最近来ないのね」
「ええ、毎週金曜日に来てた人でしょ?研究期間が終わったんだって」
「そう。決まった時間に決まった席。几帳面な人だったわ」
そのとき、私は気づいた。
彼が毎週同じ席に座っていたのも、同じ時間に来ていたのも、私と同じ理由ではなかった。彼にとって、私はそこにいる人の一人でしかなかった。
運命的な出会いだと思っていたのは、ただの偶然。
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