金木犀の香り|恋人になれない|虹色創作部
金木犀の香りが風に乗って流れてきた。
私の心境には不似合いな秋晴れの午後、駅からの帰り道。
昨日、彼のプロポーズを断ったばかりだった。
「理由を教えてくれないか」
そう尋ねる彼に、私はうまく答えることができなかった。
一緒にいて楽しい、優しい、真面目で誠実な人だと思う。
でも、結婚して毎日を過ごす相手としての想像ができなかった。
秋、金木犀の甘い香り。
三年前も同じようなことがあった。
大学の同級生だったその人は、卒業を控えて「付き合ってほしい」と言った。
私は理由を言葉にできないままノーと言った。
高校生のあの時も金木犀が咲いていた。先輩からもらった手紙には、「返事を待っている」と書かれていた。私は結局返事を出せなかった。
なぜ私は、いつも同じ季節に同じことを繰り返すのだろう。
空は雲一つない秋晴れで、人々は明るい表情で歩いている。こんなに美しい日なのに、私の胸だけが重苦しい。
私のことを不可解という人がいるかもしれない。
そう言われても、仕方がないと思う。私にも、自分が何を求めているのかわからないのだから。
金木犀の香りが狂わせているのは、相手の男性だろうか。私だろうか。
たぶん私は、誰かの気持ちを受け取ることが怖いのだ。愛されることを、重荷に感じてしまう。
角を曲がると、金木犀の木が見えた。香りがさらに強くなる。小さなオレンジ色の花が、秋晴れの空に映えて美しい。
いつか、この季節を軽やかな心で楽しめる日が来るのだろうか。

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