天気予報│恋が始まる7つのレシピ⑤
スマホが小さく呼吸した。
マナーモードにしているLINE着信の知らせ。今日の恋占いが届いていた。
「出会いのチャンス♡」
お日様マークも付いている。
よくあるサービスだが、天気予報とセットになっているのが気に入って使っている。昔は、天気予報と占いは外れるものと決まっていたそうだが、スマホ時代の天気予報は頼りになる。
恋占いの方は相変わらずだけれど。それでも私はこのアプリを使い続けている。友人には話しのタネに、と言い訳しているが、実はまだ夢をみていたいだけなのだと自分でもわかっている。
これが昨日の占いなら、思い当たることがなくはない。
駅の階段を、あと二三段で降りきるという時に後ろから突き飛ばされた。もちろん故意ではない。階段の下で辛うじて踏みとどまったものの、ハンドバッグの中身がこぼれた。
通りがかりの男性が拾うのを手伝ってくれた。
私好み。背が高くて、優しそう。その時のドキドキは、びっくりしたからだけとは思えなかった。
「大丈夫でしたか?」
「ありがとうございます」
軽く会釈をして去る彼の背を、いつもよりも速い胸の鼓動とともに私は見送った。
そういえば、昨日の恋占いは、「誰かが見てくれている」だったっけ。
仕事を終えて、駅へと歩く。
ポツリ、頬に当たるものがある。
え?
と思うまもなく、本降りとなった。今日は傘を持ってない。近くの店先で雨宿りすることにした。
こんな日もある、と思うしかない。雨のせいか昨日ひねった足首が痛い。
降り方は激しくなった。
そこに雨の中を駆け込んで来た人影がある。
「あらっ」
私は思わず声を上げた。
駅で助けてくれた男性だった。彼も私に気づいたようで、少し驚いたような顔をしている。
小さく笑って互いに会釈する。
昨日よりも近い距離で見る彼の横顔。またも鼓動が速くなったことに自分でうろたえる。
「昨日は、ありがとうございました」
「いえいえ、大丈夫でしたか?怪我はありませんでしたか?」
雨音が二人の会話を包んでいる。
誰かが言っていた。夢は、それを信じる人だけが見続けることができる。
恋占いが当たる日だって、きっとある。
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