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夜の仕事|3つのお題に空想のひらめきを|名前のない物語

祖父の仕事を知ったのは、祖父が亡くなる一週間前だった。

「お前に、話しておきたいことがある」
面会時間が終わる頃、病室で祖父は言った。

「俺の仕事のこと」
祖父は、町の時計屋。
小さな店で、古い時計を修理していた。
それ以外の仕事があるとは、思ってもみなかった。

「俺はな、星を落とす仕事をしてるんだ」
祖父は静かに言った。

私は戸惑った。
「星を落とす?」
「ああ。夜の星を、落とす」

祖父は窓の外を見た。
「人が死ぬときには、その人の星が空から落ちる。」
けれどな、と祖父は続けた。
「落ちるときに空のどこかにひっかかって、不必要に苦しむことがある。
そんなとき、夜のカーテンをそっとゆすって星を落としてやるんだ。」
私は黙って聞いていた。

「空はもちろん、世間は広いから、
俺ができることは 知り合いの星だけに限られる。
でも、できるときには落ちた星を拾って家族に届けてやるんだ」

「お前のお婆ちゃんの星、お前の両親の星もな、俺が拾った」
祖父は静かに目を閉じた。

しばらくして、また目を開けて言った。
「仏壇の引き出しに入れてある。お前に、知って欲しかったんだ」

私は独り暮らしの自宅に帰って仏壇を開けた。

引き出しの奥に、小さな箱。
開けると、三つの白い石のようなものがかすかに光っていた。
淡く、優しい光。

私は静かに箱を閉じて、仏壇に戻した。

一週間後のある夜、星が一つ流れ、庭に落ちた。
家の裏、庭の隅。
そこに、小さな光があった。

拾い上げる。
私にはそれが祖父の星だとなぜかわかった。

その夜、祖父はなくなった。
今、仏壇の引き出しの中で四つの星が並んでいる。

それから、星が落ちることに、時々私は気づくようになった。
その星を拾いに行く。

夜のカーテンは私には見えない。触れない。

私にできるのは、落ちた星を拾って家族に届けることだけ。
届けても感謝されるとは限らない。
家族にとっても、写真が一枚増える程度の受け止め方だろう。
それでも私は星拾いを続けている。

今日も空にはたくさんの星が、輝いている。
いつか、私の星も落ちる。
その時、誰かがそれを拾ってくれるのだろうか。





片桐 みかん さんの3つのお題に空想のひらめきを、に参加致します。3つのお題の中から、「星を落とす仕事」を使わせていただきました。

✨「名前のない物語」はこのnote独自の企画です。
ちょっぴりファンタジー、でもひょっとしたら……
というテイストの物語たちです。


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