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英語を話すということ|カフェ・フルエンタラ

夕暮れの街。Loveちゃんは、英会話スクールのチラシを手にしながら、ゆっくりと歩いていた。

『あなたも流暢に!ネイティブのように話せる!』
ため息が漏れる。
「流暢ね…」

海外旅行で困ったことはない。ホテルのチェックインも、レストランでの注文も、タクシーの行き先も、全部なんとかなる。でも、それは「英語を話している」ということなのだろうか。

「I can speak English...」
口にした途端、どこか違和感が残る。英語が話せるって、何だろう。

ふと見上げると、小さな看板が目に入った。「カフェ・フルエンタラ」。
疲れた足を休めるため、そっと扉を開ける。

店内は柔らかな光に包まれていた。カウンター席につくと、静かな空気の中、銀髪のマスターが黙ってコーヒーを淹れている。

隣の席では外国人の女性が、マスターと英語で会話をしていた。複雑な表情で、ゆっくりと言葉を紡いでいる。時々詰まりながらも、真剣に何かを伝えようとしていた。

「So, that's why I decided to stay in Japan a little longer...」
その言葉に、マスターはただうなずいていた。完璧な文法でも、流暢な発音でもなかったけれど、確かにそこには対話があった。

Loveちゃんは自分のスマホを取り出し、旅行アプリの翻訳フレーズ集を開く。
「How much is this?」「Where is the bathroom?」「I would like to order this.」
便利だけど、これは本当に「話す」ことなのか。

「I wonder...」
窓の外では、夕闇が深まり、街灯が灯り始めていた。
チラシの裏に、無意識に落書きをしている自分に気づく。
「話せる」と「伝わる」は違うのかもしれない。
「正しい英語」と「自分の英語」も。

Buddyマスターは黙って、Loveちゃんの前にカップを置いた。
そっと見上げると、彼の優しい眼差しが迎えてくれる。
「あの...」
言いかけて、言葉を失う。何を聞きたいのだろう。何を知りたいのだろう。

マスターは待っている。急かさず、ただそこにいる。
「I...」
英語で言おうとして、また詰まる。でも、マスターの表情は変わらない。
そう、言葉は完璧である必要はなかった。大切なのは、伝えようとする意志。
受け止めようとする心。

Loveちゃんは深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。
「I want to tell you about my day.」
拙い英語でも、それは確かに「自分の言葉」だった。
英語を話すということは、正確さや流暢さだけではない。
自分の思いを、自分の言葉で紡ぐこと。


カフェを出るとき、Loveちゃんはチラシを見つめ直した。
「流暢に」の先にあるものは何だろう。

それは明日も、明後日も、探し続ける旅のような問いかけ。
「Someday I will understand...」
小さくつぶやいて、星空の下を歩き始めた。
 




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