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読書手術|毎週ショートショートnote

その本を読み進めていたら、いつしか私は手術台に横たわっていた。

いつものように何気なく読み始めたはずだったのに。

執刀医のメスが目に入る。

「人は誰でも心の奥に傷を抱えている」

その一行に私は切り裂かれた。

ゆっくりと本を閉じたあとも、痛みは残っていた。

翌日、再びその本を開いた。甘美な痛みの誘惑に抗えなかった。

文章を一行ずつ追いながら、私は自分の中を探っていく。そこにはいくつもの傷があった。

長い間見て見ぬふりをしてきた傷たち。母との確執。友人への嫉妬。恋人への不信。

ページをめくるごとに、それらの傷が一つずつ浮かび上がってくる。癒されることを持っている。

これは自ら望んで受ける手術なのだ。麻酔が切れた後に痛みを残しながら、病巣を取り除く希望がある。

最後のページを閉じた時、自宅の部屋がそれまでとは違う場所に思えた。

静かに本を本棚に戻しながら、私は思った。

今も誰かが読書という手術台に横たわっているのだろうか。






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