恋を決めるもの│片想い文芸部
アイデアが浮かばない。憧れの先輩にプレゼントを贈りたいのに。
誕生日のお祝いと私の気持ちを伝える日が来週に迫っていた。
先輩は所属するサークルの部長。私の片想い歴は1年になる。
コーヒー好きの先輩だから、ブルーマウンテンの豆はどうだろう。好きな作家は村上春樹だから、新刊にリボンを添えて贈ろうか。
どんなプレゼントなら喜んでもらえるのかが分からなかった。
翌日、さりげなく聞いてみることにした。
「先輩って、休日は何をしてるんですか?」
「映画を見たり、彼女とドライブしたり」
彼女。
その一言で、私の中の何かが止まった。
「そうなんですね」
平静を装いながら、私の声はうわずっていた。
その夜、ベッドの中で考えていた。
プレゼントを渡すかどうかではなく、この気持ちをどうするか。
告白する勇気もない片想い。彼女がいると知った今、なおさら。
きっと素敵な女性なのだろう。先輩に似合った人に違いない。
結局プレゼントは何も買わなかった。
翌朝、サークル室の部長席の机に小さな付箋が貼ってあった。
「お誕生日おめでとうございます」
私も、心の中で同じ言葉をつぶやいた。
部屋に入ってきた先輩はその付箋を見ると、心から嬉しそうに笑った。
その笑顔にキュンとした直後、私は気づいた。
先輩を笑顔にしたのは、特別なプレゼントなんかじゃなかった。そして何より、私はその笑顔を毎日見たいと思っていた。
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