風の時間|風まかせ文芸部
昼下がりの公園。私はベンチにただ座っている。
何も用事があるわけではない。
待ち合わせがあるわけでもない。
歩くのに飽きて腰を下ろした。
あれからどのくらいたったのだろう。
風が頬を撫でていく。
木の葉がさらさらと音を立てている。
遠くで子どもの声が聞こえる。
私が何もしなくても、世界はきちんと活きている。
木漏れ日が心地よい。
思い出が通り過ぎる。
いつの間にかベンチの影が少し長くなった。
私の影も一緒に。
バッグの中でスマートフォンがまた小さく鳴った。
座ってから何回目だろう?
無視しようと決めたわけではない。
でも私は動かない。
風がまた吹いた。
くるくると舞い踊りながら私の足元に何かが降りてきた。
緑色の桜の葉っぱ、
秋にはまだ遠い。
けれど季節は確実に動いている。
それ自身気づかない内に。
「うつろうのは
人も同じなのかな」
誰にともなくつぶやいて、ようやく立ち上がった。
葉を落とした風が、私の背中を押してくれたのかもしれない。
振り返ると、ベンチはまた誰かを待っている。
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