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押して歩く|3つのお題に空想のひらめきを

学校からの帰り道。
彼は、いつも自転車を押していた。
乗れば、すぐの距離なのに。からからと、押していた。

家が同じ方角の私たちは、他愛のない話をしながら、しばしば一緒に歩いた。

彼に聞いたことがある。
「乗らないの?」
「んー、帰りは押して歩くことにしている」
彼は、そう言って笑った。

坂の上から、街が見えた。夕日を浴びた家々の屋根が、みんな赤かった。桜の季節は、花びらが、自転車のかごに溜まった。

毎日、同じ帰り道を歩いて、同じ坂で街を見て、同じ角で手を振って別れた。「じゃあ、また明日」。それだけだった。

自分の気持ちにもっと素直になろう、と思うこともあった。けれど、告白してしまったら、この帰り道が変わってしまうかもしれないことが怖かった。

卒業して、彼は遠くの大学に行った。

——それだけ、それきりだ。

二十年ぶりに、同窓会で彼と会った。少し太っていた。子どもが二人いるという。昔のことを話しているうちに、あの帰り道の話になった。

「そういえば」と、彼が言った。
「二人でよく一緒に帰ったよな」
「あなたはなぜか、いつも自転車を押していた」
「なんか、もったいなくて」

そう言って、彼はジョッキを傾けた。

「もったいないことをしたけどな。結局」

私は彼を見た。ビールを飲んだ彼の顔は、赤かった。
似た者同士の二人が、二十年経って、やっと、答え合わせをしている。

「ばか」と、私は言った。彼に言ったのか、自分に言ったのか、私にもわからなかった。

「ほんとにな」と、彼は笑った。

窓の外は、もう暗い。
今からあの坂へ行っても、赤い屋根は、もう、見えない。





片桐みかんさんのお題に応募します。

今回は、頂いた3つのお題+イラスト、全部カバーしたつもりです。

アイキャッチ画像は、片桐みかんさんのお題からキャプチャーしています。
片桐みかんさん、こういう使い方がNGなら、「こっそり」連絡ください。別の画像に差し替えます💦

読者の皆様、素敵な元画像は上記のリンク先でご覧ください。



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