プレゼンの後|5つの恋のエピローグ②
会議室に満ちる拍手。舞い上がる気持ち。プレゼンが終わった瞬間だった。
「素晴らしい企画ですね」
部長に言われて、改めてこみ上げるものがある。半年かけて準備してきたプロジェクト。これでやっとスタートが切れる。
控室に戻って、スマホを確認する。案件関係の連絡がいくつか。同期からの「お疲れさま」メッセージ。
そして、彼からの未読のLINE。「今日はプレゼンだよね。頑張って」
送信時刻を見ると、朝の8時。そうだった、一昨日話したことさえ忘れていた。
返信をしかけて、思い直した。そろそろクライアントが来る時間だ。
スマホを片手に応接室に向かいながらふと思った。
最近、彼のことを考える時間が減っている?
付き合い始めた頃は、仕事中でも彼のことばかり考えていた。LINEが来れば即座に返信していた。会えない日は寂しくて、会える日にはうきうきして。
今は、仕事のことで頭がいっぱいだ。新しいプロジェクト、クライアントとの打ち合わせ、チームメンバーとの連携。毎日が充実していて、気がつくと一日が終わっている。
「仕事、楽しそうだね」
先週のデートのとき、彼がそう言った。優しい人だ。私を責めたりはしない。
「ありがとう」
そう答えながら、頭ではプレゼンのレイアウトを考えていた。
彼は変わらない。相変わらず優しくて、相変わらず私を大切にしてくれる。
変わったのは、私。
エレベーターの中でスマホの画面を横目で眺める。「頑張って」の文字。
昔なら、このひとことにもっとときめいていたはず。今は、嬉しいけれど、胸が躍るということはない。
これが大人になるということなのだろうか。
それとも、もう恋じゃなくなったということなのだろうか。
「お疲れさまでした」
同僚が声をかけてくれる。
「ありがとうございます」
私は笑顔で答えて、スマホをバッグにしまった。
返事は、家に帰ってから考えよう。
ミーティング前のわずかな時間。今は、今日の成功を味わっていたかった。
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