半導体大仏|毎週ショートショートnote|名前のない物語
境内は意外にすいていた。
この寺の大仏は、参拝者があとを絶たない。
理由は不明だ。
単に寺の宣伝がうまいからなのかもしれない。
私は三年間、毎月通った。
「商売が成功しますように」
「お金が貯まりますように」
「健康でいられますように」
ご利益があったとはいえない。
「幸せになりますように」
隣で手を合わせていた老人に、つい愚痴をこぼした。
「全然、叶わないんですよ。賽銭が足りないんですかね」
老人は意味ありげに笑った。
「この大仏のあだ名を知っているかい?半導体大仏というんだ」
私は、尋ねた。
「最先端?ってことですか?」
「願いを通したり、通さなかったり。条件があるのさ」
「孫が、元気でありますように」
老人はそう言って、去り際に微笑んだ。
「願い事はな、誰かのためにするものだよ」
私は手を合わせ直すと、
離れたところで待っていた娘のところへ戻った。
「お父さん、ずっと一人で何を祈っていたの?」
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