預かった封筒|片便り文芸部
中学から続く親友である彼女と私。彼女は美人で頭も良い、少し気の弱いところがあるが愛想も愛嬌もある。私はというと取り立てて自慢できるところはなく、気が強い。正反対だけれど、長続きしているのは感性が似ているからかもしれない。インドア派、紅茶好き、甘いもの好き。
でも最近、誤算に気づいた。好きな男性の好みも一緒だったのだ。
半年前の合コンで知り合った彼と、私たちは三人でよく遊ぶようになった。私は、いつものように道化役。それでいいと思っていた。
そんなある日、彼女に呼び出された。
「大事な相談があるの」
待ち合わせの喫茶店で、彼女は震える手で封筒を差し出した。
「彼へのラブレター。こんなこと、あなたにしか頼めない」
私の心臓が早鐘を打った。同じ人を好きなのに、どうして私に。
「もちろん、いいよ」
嘘をついた。断れるはずがなかった。
彼女は涙ぐみながら自分の想いを語った。私が同じ人を好きだなんて、少しも思ってもいない。紅茶がいつもより苦く感じられた。
「そういえば、あなたも今日話したいことがあるって言ってたよね?」
「大丈夫、また今度話すわ」
今日の彼女に言えるような話ではなかった。
家に帰って封筒を見つめる。彼女の火照った顔と、彼の笑顔が交互に浮かんだ。
失くしてしまったと嘘をつこうか。自分で渡した方が良いと言って、返してしまおうか。それとも、実は私も彼が好きだと告白してしまおうか。
眠れない夜が続いた。
三日後、私は彼と二人で喫茶店にいた。
「君から受け取って欲しいものがあるって?」
彼の優しい笑顔を見つめながら、私は何も言えなかった。彼女から預かった封筒はハンドバッグの中にある。でも出せない。
「どうしたの?」
「やっぱり、何でもない。・・・急いでるから」
私は逃げるように席を立った。彼の困惑した表情が忘れられない。
家に帰って、着替えることもなくベッドに突っ伏した。友情を裏切っている。彼女を裏切っている。でも、自分の気持ちにも嘘はつけない。
夜になって、ようやく起き上がった。
ハンドバッグを開けると、封筒が一つ、寂しそうに残されていた。
宛名は彼。差出人は私。
彼女のラブレターはもうそこにはなかった。
神様は残酷だ。同じ相手を二人して好きにならなくても良いのに。
窓の外では星が瞬いていたが、私の気持ちはいつまでも晴れなかった。
