雲を売る|シロクマ文芸部
雲を売るとしたら、どんな人が買ってくれるだろう。
外回りの営業に疲れて、ふと、そんなことを考えた。
空を見上げながら電車を待つ午後、秋空にはいろいろな雲が浮かんでいる。
まず買ってくれそうなのは、子どもたちだろう。
「あの雲、ください」
小さな手でお小遣いを握りしめて、動物の形をした雲を指差す。でも、お母さんに首を振られて、しょんぼりすることだろう。
恋人たちはどうだろう。
「君にあの雲をプレゼントしたい」
ハート型の雲を見つけて、彼が彼女に言う。彼女は「素敵ね」とほほ笑むけれど、心の中では「あのバッグを買ってくれないかな」と思っているかもしれない。
一番の得意客は、きっと一人暮らしのお年寄りだ。
「今日は少し寂しいから、あの雲を買おう」
窓辺でお茶を飲みながら、話し相手になってくれそうな雲を選ぶ。雲は静かに、そしてゆっくりと形を変えながらそばにいてくれる。
サラリーマンなら、ストレス解消用の雲を買うかもしれない。
「この雲に向かって何を叫んでもいいんですか?」
真っ白な雲を購入して、屋上で大声を出す。雲は全部吸い込んでくれそうだ。
電車が到着した。
窓際の席に腰を下ろしながら、再び空を見上げる。
雲は誰のものでもない。でも、誰かのものになることもできる。
見る人次第で、雲はどんな形でも意味でも持つことができる。
本当に雲を売ることができるなら、私は看板にこう書こう。
「雲、お売りします。お客様の心の形に合わせて」
そんなお店なら、きっと繁盛するに違いない。
小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加させていただきます。
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