手帳の片隅に|風まかせ文芸部
新しい手帳を買う時に、いつも思う。
今年こそは、ちゃんと使おう。そう心に決めたはずなのに、結局三日坊主で終わる。
でも今年は違った。手帳を開くたびに、小さな楽しみがある。
毎週火曜日の欄の小さな「K」の文字。
さんざん迷った挙句に、半年前に圭吾に告白した。
意外にも彼はうなずいてくれた。
それから、火曜日はデートの日になった。
Kの文字は、手帳の最後まで続いている。
圭吾の目の前で手帳を開いて、夢のあれこれを話す。私の幸せは続いていた。
今日までは。
「別れて欲しいんだ」
「大学を辞めて友達と会社を作る。新しい道に集中したい。中途半端な付き合いはできない」
彼が何を言っているのか分からなかった。
(なぜ?どうして?そばに居させてはくれないの?あなたの邪魔はしない・・・)
湧き上がるいくつもの思いを言葉にすることはできなかった。彼にすがるのは、自分のわがままなのかもしれないという想いだけが、叫びだすのを押しとどめていた。
そのあと、いつ、どうやって家に帰ったのかも覚えていない。
泣き続けて、夜を過ごした。涙とともに自分のすべてが流れ出しているような気持だった。
昼過ぎて、ようやくベッドに腰かけた私の中には、後悔だけが残っていた。
ふと見た机の上には、半開きの手帳。
Kの文字は、むなしく12月まで続いている。
年末のページをめくった。
1月のページがまだあった。
Kの文字はまだ続いていた。
この文字を消すことは私にはできない、そう思いながら私は余白を見続けていた。
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