赤とんぼの夕暮れ|虹色創作部
公園のブランコに何年かぶりで腰を下ろした。赤とんぼが目の前を横切る。 夕暮れの空は、子供の頃に見た色と同じだ。
記憶の中の公園はもっと広かった。ブランコも、滑り台も、砂場も、すべてが大きかった。何時間でも遊んでいたかった。
ブランコを母が後ろから押してくれた。風を切る音。母の笑い声。目の前を飛ぶ赤とんぼ。 つかまえたくて、精一杯手を伸ばした。でも、届かなかった。
友達とも何度もここに来たはずなのに、思い出すのは母と来たことばかりだ。
ブランコを軽く揺らすと小さくきしんだ。赤とんぼがまた一匹、目の前を通り過ぎていく。
今なら手が届くかもしれない。 少し震える手を伸ばした。けれど、やはり赤とんぼは逃げて行った。
夕焼けが少しずつ色を濃くしていく。 街のざわめきも、夜のそれへと変わっていく。
うつろう時の中を漂う赤とんぼ。
母を想いながら、私はもう一度手を伸ばした。
虹くりっぷ@虹色創作部さんの「赤とんぼ」というお題、イラストも使わせていただいています。
※noteの仕様で、イラストの上下が断ち切りになっています。
元画像は、以下のリンク先でお楽しみださい。
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