星を買う|ひとりじゃない|シロクマ文芸部
星を買う
星を買うとしたら、いくら出せば買えるのだろう。
六歳の息子が熱を出して小学校を早退した夜。二人でベランダに出て空を見上げながら、そんなことを考えた。
「ママ、あの星、きれいだね」
息子が指差した先には、ひときわ明るく光る星がある。
「そうね」
「うん!僕欲しい。買ってくれる?」
屈託のない笑顔で息子が振り返る。
星なんて売っているわけがない。でも、もし売っていたとしたら。
一番小さな星でも、家を買うよりも高いだろう。私たち母子には到底手は届かない。
我が家では駄菓子屋のおもちゃを買ってあげることさえ限られている。
それでも息子のために買ってあげたいと思う。誕生日に、クリスマスに、頑張った時のご褒美に。
父親がいないこの子は、プレゼントをもらう機会も少ない。そう思うと涙が出てくる。
私が子どもの頃、母は忙しくて星空を見上げる余裕なんてなかった。父はいなかったし、母は昼も夜も働いていた。
「星なんて見てないで、宿題をしなさい」
そう言われて部屋に戻ったことを覚えている。
「ママ、星って誰のもの?」
息子の質問に、私は少し考えた。
「みんなのものよ。見ている人のものなのかもしれないね。」
「じゃあ、今のあの星は僕のもの?」
「そうね。今、あなたが見ているから」
息子は満足そうに微笑んだ。
いつか息子が大人になった時、このベランダで過ごした時間を思い出すことがあるだろうか。買えない星空を、二人で分け合ったことを。
「ママ、明日も星、見る?」
「もちろん」
私たちに星は買えない。でも、星空は毎夜、輝いている。二人で見上げることならできる。
それは、この世界からの贈り物なのだと思う。
小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加させていただきます。
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