雨音の記憶|虹色創作部
雨の音を聞くと、あの夜のことを思い出す。
傘を差しながら夜道をひとり歩いていた。三年前の六月。こんな風に雨が降っていた。
彼と別れた直後だった。
「君といると疲れる」
彼の言葉が、雨音に混じって蘇ってくる。
理由を尋ねても、彼は首を振るだけだった。
傘に当たる雨粒は、あの夜と同じリズムを刻んでいる。
信号待ちの交差点。空を見上げる。街灯に照らされた雨が、斜めに降り注いでいる。
あの時の私は、彼の言っていることが理解できなかった。一緒にいて楽しそうだったのに、どうして急に。
私は、彼に合わせすぎたのかもしれない。彼が喜びそうなことを言い、彼が嫌がりそうなことは避けた。本当の自分を見せることは怖くてできなかった。いつも何かを演じていた。
そんな私といて、彼は息が詰まったのだろう。
信号は青に変わった。私は再び歩き始める。何度目かの後悔が私に降り注いでいる。雨は強くなっているようだ。
三年間で、私は何か変わっただろうか。
今、私を食事に誘ってくれる人がいる。優しくて、話していて楽しい。でも私は、また同じことを繰り返すのではないか。合わせることをためらう私は、今度は距離を置いてしまう。
雨音が激しくなった。
家まであと少し。玄関の鍵をバッグから取り出す。
雨の夜は、過去を運んでくる。忘れたい記憶も、大切にしたい思い出も。
雨音と過去が心の中に一緒に降りしきる。
この雨はいつやむのだろう。
虹くりっぷ@虹色創作部さんの素敵なコラボ企画です。
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