✨ Ep3/a こころのいろ(一般向)
この物語で探したい "こえにならないことば"
「わたしは、わたしのままでいいの?」
こころのいろ
1. わたしの時間
そらは、ひとりでいることが好きでした。 お部屋の隅っこで、ぼんやりと窓の外を眺めている時間。雲がゆっくりと形を変えていくのを見ている時間。そんな静かな時間が、そらにとっては宝物でした。
そらの心は、やわらかな紫色の光に包まれていました。 でも、まわりの大人たちには、それが見えません。
「そらちゃん、なにしてるの?」 お母さんが心配そうに声をかけました。 「なにも」 そらは、そっと答えました。本当はたくさんのことを考えていたけれど、うまく言葉にできませんでした。
――なんで、ひとりの時間がいけないの?
そらの心の中で、小さな赤い色がくるくると回り始めました。もどかしさの色でした。
2. みえないもの
幼稚園で、みんなと一緒に歌を歌う時間。 そらは、なぜだか歌詞を覚えられませんでした。みんなの声がワンワンと響いて、自分の声がどこにあるのかわからなくなってしまうのです。
「そらちゃん、ちゃんと歌いましょう」 先生の声が、グレーの霧のように重くのしかかってきました。
そらは、必死に口を動かしました。でも、心の中の紫色の光は、だんだん小さくなっていきました。
お友達は、みんな楽しそうに歌っています。どうして自分だけ、うまくできないのでしょう。
そらの心から、青い雫がぽつんと落ちました。
――ぼく、だめな子なのかな。
(そらは、自分のことを「ぼく」と呼ぶことがありました。「わたし」と呼ぶこともありました。その日の気分で、言葉が変わるのです)
3. ばくはつする気持ち
「そら、お片付けの時間よ」 お母さんが言いました。でも、そらはブロックで作った不思議な形を、まだ見ていたかったのです。
「あと少し」 「だめ。もうお片付けの時間」 「やだ」 「そらちゃん!」
その瞬間、そらの心の中で、赤い色が大きく爆発しました。
「やだやだやだ!」
そらは、ブロックを床に投げつけました。カラカラと音がして、お母さんがびっくりした顔をしました。
お母さんの心にも、グレーの霧が濃くなりました。
――どうしてこの子は、いつもこうなの?どうしてあげたらいいの?
でも、そらにはそのことばは見えませんでした。お母さんが怒っていることだけが、わかりました。
4. わからない心配
その夜、お父さんとお母さんが小さな声で話していました。
「そらのこと、心配なの」 「どうして?」 「ほかの子と違うみたい。みんなと一緒に行動ができないし、すぐに癇癪を起こすし」
そらは、階段の途中で座って聞いていました。
――「ほかの子と違う」って、だめなことなの?
そらの心に、また青い雫が落ちました。今度は、もっと大きな雫でした。
お父さんとお母さんの心は、グレーの霧でいっぱいでした。でも、その霧の奥には、金色の光がありました。そらのことが大好きだという気持ちの光です。
ただ、ふたりとも、その光の伝え方がわからないのでした。
5. おじいちゃんの目
次の日曜日、おじいちゃんが遊びに来ました。
おじいちゃんは、そらがブロックで作った不思議な形を見て、しゃがみこみました。
「これ、なあに?」 「うーんとね、お城だけど、ロケットで、お花なの」
みんなには意味がわからないものでしたが、おじいちゃんは真剣に見つめました。
「すごいなあ。ひとつのもので、こんなにたくさんの意味があるんだね」
そらの心の中で、紫色の光がふわっと明るくなりました。
おじいちゃんには、見えているの?そらの心の色が。
6. 色を見る人
お昼ご飯の後、みんながテレビを見ている時、そらはおじいちゃんの隣に座りました。
「おじいちゃん」 「なあに?」 「ぼく、変なの?」
おじいちゃんは、そらの顔をじっと見ました。そして、にっこりと笑いました。
「そらちゃんの心の中には、きれいな色がたくさんあるんだね」 「え?」 「ほら、今は紫色の光が見えるよ。静かで、深くて、とてもきれいな色」
そらは、びっくりしました。
「時々、赤い色がくるくる回るでしょう?それは、そらちゃんが一生懸命考えているってことだよね」 「うん、考えてる」 「そう。青い雫が落ちる時もあるね。それは、そらちゃんがとっても優しいから、悲しくなるんだよね」
おじいちゃんの言葉を聞いていると、そらの心に緑色の風がふんわりと吹きました。安心の色でした。
7. 大人たちの霧
「お父さんとお母さんも、そらちゃんのことが大好きなんだよ」 おじいちゃんが、やさしく続けました。
「でも、みんなの心には、グレーの霧がかかっているんだよ。心配の霧がね」 「なんで?」 「そらちゃんに幸せになってもらいたいから。でも、その方法がわからなくて、霧ができちゃうの」
そらは、考えました。お母さんの心にも、お父さんの心にも、金色の光があることを、おじいちゃんは教えてくれました。
「霧の向こうでは、いつもそらちゃんのことを考えているよ。金色の光がね」
8. 伝える方法
「そらちゃん、お母さんに、自分の気持ちを教えてあげられる?」 おじいちゃんが聞きました。
「どうやって?」 「そらちゃんの心の色を、言葉や絵で表してみて。『今、ぼくの心は紫色』とか『今は赤い色がくるくるしてる』とか」
そらは、なるほどと思いました。
「みんなには、そらちゃんの心の色が見えないの。だから、教えてあげてよ」
その日の夕方、そらはお母さんに言いました。
「お母さん、今、ぼくの心は紫色なの」 お母さんは、最初はきょとんとしていました。でも、だんだん理解してくれました。 「そうなのね。ひとりでいたい紫なのね」
そらの心の緑色の風が、大きく広がりました。
9. 見えてくる光
それから、そらは自分の気持ちを色で表すようになりました。
「今は赤い色がくるくるしてる」と言うと、お母さんは「そうね、少し時間をあげるから、気持ちを整理してね」と言ってくれるようになりました。
「青い雫が落ちそう」と言うと、お父さんは「どうしたの?話してごらん」と、そっと抱きしめてくれました。
そして、そらも気づきました。お母さんの心にも、お父さんの心にも、グレーの霧の向こうに金色の光があることを。
「お母さん、今日は金色の光が見えるよ」 そらが言うと、お母さんも笑顔になりました。 「そらちゃんが教えてくれるから、私たちも自分の気持ちがわかるようになったの」
10. それぞれの色
ある日、幼稚園で、そらはお友達のたかしくんが泣いているのを見ました。
たかしくんの心からも、青い雫が落ちていました。
「たかしくん、今、青い色?」 そらが聞くと、たかしくんはびっくりしました。 「そう...なんか、悲しいの」 「ぼくもね、よく青い雫が落ちるよ。でも、だいじょうぶ。そのうち、また違う色になるから」
たかしくんの心に、少しだけ緑色の風が吹きました。
そらは気づきました。みんな、それぞれ違う色を持っているのです。そして、みんなきれいなのです。
11. 新しい歌
その日の帰り道、そらはお母さんに言いました。
「ぼく、みんなと違うのが、今日はうれしかった」 「どうして?」 「だって、ぼくにしか見えない色があるから。ぼくにしかできないことがあるから」
お母さんの心では金色の光が、とても明るく輝きました。
「そうね。そらちゃんは、そらちゃんらしくていいのよ」
その夜、そらは自分だけの歌を作りました。
♪ぼくの心には いろんな色 ♪紫の静けさ 赤いくるくる ♪青い雫も 緑の風も ♪みんなぼくの 大切な色
お母さんとお父さんも、その歌を覚えました。そして、家族みんなで歌うようになりました。
12. ひろがる理解
そらの心の色を理解してくれる人が、だんだん増えていきました。
幼稚園の先生も、「そらちゃん、今日は何色?」と聞いてくれるようになりました。
お友達のたかしくんも、自分の気持ちを色で表すようになりました。
「今日は黄色い気分!」 「ぼくは水色かな」
クラスのみんなが、それぞれの心の色を大切にするようになりました。
そして、そらは知りました。
「わかってもらえない」と思っていたけれど、本当は「わかってもらう方法」をお互いがしらなかっただけなのです。
そして、自分も他の人の心の色を見ようとすることが大切だったのです。
13. 虹の色
今日、そらの心は虹色に輝いています。
紫色の静けさも、赤いくるくるも、青い雫も、緑の風も、黄色い喜びも、みんな大切な自分の一部です。
お母さんとお父さんの心のグレーの霧も、だんだん薄くなって、金色の光がよく見えるようになりました。
おじいちゃんは、そらを抱きしめて言いました。
「そらちゃんが教えてくれたおかげで、みんな心の色が見えるようになったね」 「うん。みんな、違う色を持ってるんだね」 「そう。世界は、色であふれているんだよ」
窓の外で、夕日が空を染めています。オレンジ色、ピンク色、紫色。空も、たくさんの色を持っています。
そらは微笑みました。
自分らしくいることは、決して悪いことではありませんでした。
みんなが持つ色は、みんな違って、みんなきれいなのです。
そして、お互いの色を見ようとすることで、世界はもっと美しくなるのです。
おわり
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📚 この物語は、年齢に合わせて3つのバージョンをご用意しています
対象 | 特徴 |表記
🌸【幼児向け】3〜5歳 | ひらがな中心・読み聞かせに最適 | Ep3/c
🌿【低学年向け】5〜9歳 | 小学校低学年の一人読みに | Ep3/b
🌟【一般向け】9歳〜おとな | 深い感動をお届け | Ep3/a
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