約束の場所|青ブラ文学部
教会の前に、私は独り、立っていた。
ここで結婚式を挙げるはずだった。 招待状も送り終えて、ドレスも決まっていた。
三ヶ月前、彼は言った。「君とは合わないと思う」 理由を聞いても、彼は首を振るだけだった。
私のことが嫌いになったのか、好きな人が他に居たのか。何か特別な理由があったのか。何も分からなかった。
結婚詐欺だったのではないか、慰謝料も請求できるのではないか。そう言って友人は慰めてくれたが、私の気持ちは晴れなかった。
私たちがこの教会を初めて訪れた春の日、彼は「ここで式を挙げよう」と言った。
教会の庭には、あの日と同じように薔薇が咲いている。
彼のことが好きだった。けれど私は彼が好きな以上に、結婚に憧れていたのかもしれない。
式場を決める時も、招待客を選ぶ時も、私は舞い上がっていたし、今から思えば彼はどこか上の空だった。 私は、それに気づかずにいた。いや、気づきたくなかったのだ。彼は最初から迷っていたのかもしれない。
教会の扉が開いて、カップルが出てきた。幸せそうな花嫁の笑顔。傍らに立つ花婿の穏やかな顔。
二人に向けて私は静かに微笑んだ。
🧡 スキ 🤝 フォロー 💬 コメント…のいずれかでもいただけたら、とても励みになります!
