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才能は不公平?|カフェ・フルエンタラ

窓の外は雨。

滴る雨粒が窓ガラスを伝って流れ落ちる様子を、Misaはぼんやりと眺めていた。英会話スクールの帰り道、急な雨に足を止められ、ふと目についた小さな看板。「カフェ・フルエンタラ」。

店内に足を踏み入れると、柔らかな光と静かな音楽が彼女を包み込んだ。カウンター席に腰掛けると、銀髪の渋いマスターが無言でカップを差し出した。

「ありがとう...」
Misaは小さな声でお礼を言い、温かな紅茶を一口すすった。胸の奥に溜まっていた重さが、少しだけ緩んだ気がした。

「今日も、上手くいかなかった」
つぶやくように言った言葉に、マスターのBuddyは黙ってうなずいた。

「4年目なんです、英会話。でも、同じクラスの人たちはみんな上達が早くて...」
文法を覚えても、単語を増やしても、アプリで毎日練習しても、彼女の言葉はいつも口の中でもつれた。同期入社のAikoは半年で海外出張に行くようになったのに。
「才能って、不公平だと思いませんか?」

マスターは静かにカップを拭きながら、ふと窓の外を指さした。
雨は上がりかけていて、夕日が雲の間から差し込み、雨上がりの街を金色に染めていた。
「雨粒、見えるかい?」
Misaが目を凝らすと、窓を伝う雨粒がそれぞれ違う道筋を辿っていた。早く流れる雨粒、ゆっくり形を変える雨粒、途中で止まっては再び動き出す雨粒。

「みんな、同じ場所には行かないんだ」
Buddyの静かな声が響いた。
「でも、どの雨粒も、最終的には地面に辿り着く」
Misaはしばらく黙って雨粒を眺めていた。

マスターは続けた。
「才能という言葉を、『早く辿り着く能力』と定義するから苦しくなるのじゃないかな。『自分らしく辿り着く能力』かもしれないよ」
カウンターの端では、高校生らしき少女が単語帳を開きながら呟いていた。
「もう一周、復習しなきゃ...」

その隣では、スーツ姿の男性が英字新聞を読みふけっていた。
みんな違う形で、言葉と向き合っている。

「私、毎日アプリで勉強してるのに、全然話せなくて...」
マスターは微笑んだ。「君は聞く力が素晴らしい。さっき入ってきた外国人のお客さんの注文を自然に理解していたね」

Misaは驚いた。確かに、さっき隣で外国人観光客が注文していた内容を、彼女は無意識に理解していた。でも、それは当たり前のことに思えて...

「気づかない進歩もある。見えない才能もある」
Buddyは静かにカップにお湯を注ぎ足した。
「君の旅路は、君だけのもの」

帰り際、Misaは自分のスマホを取り出した。英語学習アプリを開くと、365日連続で学習を続けているという記録が表示されていた。
一年前の自分は、メニューさえ読めなかったのに。

窓の外では、雨上がりの虹が小さく輝いていた。
それぞれの雨粒が、それぞれの道を辿って、そして今、美しい一つの虹になっている。

Misaは深呼吸をして、カフェを後にした。
明日も、自分のペースで、一歩ずつ。




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