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忘れ物|せりふ三題噺

「はい、忘れ物」
そう言いながら、母は私にいろいろなものを手渡してくれた。

学校へ行く時、
「ハンカチは?」
「あ」
「はい、忘れ物」

遠足の日、
「お弁当持った?」
「あ」
「はい、忘れ物」

私の忘れん坊は、あの頃から続いている。

そんな私が、今は娘に言っている。

保育園に行く時、
「ハンカチ」
「あ」
「はい、忘れ物」

娘は、笑う。
「ママ、そればっかり」
「だって、忘れるから」
「忘れないもん」

でも、忘れる。
この間も、エビフライのお弁当を忘れた。
三輪車に乗って遊びに行く時も、帽子を忘れた。
冬には、手袋を忘れて、
「つららみたいに冷たい」と泣いていた。

私も、きっとああだったんだろう。
母も、きっとこんな風に私を見ていたんだろう。

娘の忘れ物は、続く。
でも、それでいい。
私が気づいてあげられる。
母が、してくれたように。

「はい、忘れ物」
娘が、振り返る。
「ありがとう、ママ」

今朝もそうやって送り出した娘を、そろそろ迎えに行く時間だ。

あっ。
お迎えに行く前に銀行に行かなきゃいけないことを忘れてた。





はらとけいさんのせりふ三題噺に参加させていただきます。
今回は
■セリフ 「はい、忘れ物」
■三題 ・エビフライ・三輪車・つらら

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よろしかったら、忘れずに。

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