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ついていない午後|3つのお題に空想のひらめきを

散々な午後だった。

クライアントからのクレームが続いた。
同僚と愚痴をこぼしあった。

些細なミスで課長から叱られた。
係長が辛うじてとりなしてくれた。

私は落ち込んで、会社を出た。
駅に向かう。

信号待ち。 イライラが募る。

やっと青になった。
歩き出そうとした途端、前の人が立ち止まり何かを拾う仕草。
その前を歩いていた人の落としものらしい。

私は、舌打ちしそうになった。

駅に着いた。
ホームに向かう階段。
私は、人の波に押されながら階段を下りた。

キャリーを引く、若い女性。
手を貸す男性。
私は嫌味を言おうとしたが、なぜか言葉が出なかった。

やっと来た電車に乗り込む。
満員。立っているのが、やっと。

次の駅、私の前に座っていた人が、降りた。
私は座ろうとした。

横合いから、小さな子どもが滑り込んで来た。
慌てて、たしなめる母親。

その子は、「ごめんなさい」と私に言って母親に席を示した。
見ると母親は、もう一人の幼児を抱っこしている。

私は迷ったが、手で「どうぞ」と示した。
「ありがとうございます」
恐縮しながら母親は腰を下ろした。
ほっとした表情で、何度も私にお礼を言った。

子どもが私を見上げた。
その瞳がなぜか心に残った。

私は、黙って頷くと、窓の外を見た。
その窓に、今日見たいろいろなものが映っているような気がした。
同僚の顏、係長の声、交差点で落とし物を拾う人の姿。
駅の階段の男女。そしてこの親子。

私がイライラしていただけで、
本当は皆が助け合っている。

私がその意味に気づいていなかっただけで、
誰もが他人を気遣っている。

思っていたより、やさしい世界。

ついていない一日だと思ったのは、
私が輪の外に居たからだった。

「明日は、もっとその一部になろう」
そう心に決めて私は電車を降りた。





片桐 みかん さんの3つのお題に空想のひらめきを、に参加致します。3つのお題の中から、「思っていたより、やさしい世界」を使わせていただきました。


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