たいてい序盤に|毎週ショートショートnote
「最初の仕事なんてお試しさ。本当の勝負はそのあとだ。」
先輩の言葉を胸に、田中は総務課での日々を過ごした。コピー取りや書類整理、単調な業務も黙々とこなした。しかし合間に、営業部や企画部で活躍する同期の話を聞くたびに、早く異動したいと思っていた。
三年後、念願の営業部への配属の辞令。けれど、新規開拓は厳しく、数字に追われる毎日。そんな鬱々とした日々の後に少しずつだが見えてきた明るさがあった。
ふと気づくと、思わぬところで役に立ってきたのが総務課時代に築いた社内の人脈だ。あの時お茶を入れてあげた経理の佐藤さんが予算の相談に乗ってくれる。コピー機の前で世間話をした製造部の山田さんが、製品の詳細を教えてくれる。
「必要な情報や武器は、たいてい序盤に手に入る。ゲームではバカにしがちだけれど、仕事においてはそれらが一番重要なのさ」
新入社員を前に、今は田中がそう言っている。
たらはかに(田原にか)さんの、「毎週ショートショートnote」に参加します。
