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秘密基地の桜餅|せりふ三題噺

オレンジに変わり始めた空の下、タカシとミノルは、空き地の隅にいた。
古びたダンボールを、必死に組み立てている。

「よし、完成!」
誇らしげにそう言うとミノルはダンボールの中に潜り込み、小さな穴から外を覗き込んだ。

タカシは、その様子を外から見ていた。ダンボールの隙間から、ミノルの目がキョロキョロと動いているのが見える。

「ミノル君、そこ、どこ?」
そう尋ねるタカシに、ダンボールの中から答えるミノルの声は、少しこもって聞こえた。
「最高の秘密基地だよ、どうぞ」

少しよれて、角が潰れているそのダンボールは、二人にとっては、世界一頑丈な城だった。 タカシは笑ってその狭い空間に潜り込むと、ミノルの横に座った。

その時だ。
「あら、タカシちゃん、ミノルちゃん。こんなところで何してるの?」
少ししゃがれた優しい声が聞こえた。

段ボールから顔を出して二人が振り返ると、近所の和子おばあちゃんが、買い物かごを手に立っていた。

「秘密基地を作ってるんだよ」
タカシが元気に答えた。

和子おばあちゃんは、二人の「秘密基地」を見て、微笑んだ。
「あら、立派なお城ね。探検の途中かしら?」

和子おばあちゃんは、買い物かごから、小さな包みを取り出した。
「これ、よかったら食べない? 甘いものがあると、探検もはかどるでしょう」

包みを開けると、中には、ピンク色の桜餅。
ほんのりと、桜の葉の甘酸っぱい匂いが広がる。
「わあ、ありがとう!」
タカシとミノルは目を輝かせ、その場で半分ずつにして食べた。
夕陽を浴びて輝く桜餅は、今まで食べたことのない味がした。

「美味しいね」
「うん」
二人は笑い合った。

夕焼けの空は、次第に色を変えていく。いつの間にか出た一番星が、輝きを増していた。

「そろそろおうちに帰る時間ね」
和子おばあちゃんに促されて、タカシとミノルは、桜餅の甘い匂いを胸に、それぞれの家へと帰っていった。

和子おばあちゃんは、彼らの背中を、優しく見守っていた。

「明日も、また遊ぼうね」
「うん、約束だよ」

二人の声が、夕暮れの路地に、静かに響いた。





はらとけいさんのせりふ三題噺に参加します。



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