古本を読む|シロクマ文芸部
古本を手にすると、前の持ち主のことをつい考えてしまう。
この小説も、誰かが読んでいたものだ。薄い鉛筆の線が引いてあるページがいくつかある。
その人はどんな気持ちでこの線を引いたのだろう。共感したのか、疑問に思ったのか。
私も鉛筆を片手に読み進める。
私が引く線と前の持ち主が引いた線。同じ個所の時もあれば、意外なところに引かれているものもある。
「涙は言葉にならない感情のあらわれである」
そんな一文に線が引かれている。何かを思い出したのだろうか。覚えておきたいと思ったのだろうか。
顔を近づけると古い紙の匂いに混じって、ほんの少し香水のような香りがする。女性だったのかもしれない。
どんな人だったのだろう。何歳くらいの人だったのだろう。
なぜこの本を手放したのだろう。引っ越しで荷物を整理したのか、本棚がいっぱいになったのか。それとも、もう読み返すことはないと思ったのか。
誰かに読まれた本には、その人の時間が溶け込んでいるような気がする。
見知らぬ誰かとの読書会を終え、本を本棚に戻す。
未来の私はこの本を読み返す時に何を思うだろう?
それとも再び古本屋を経て、誰かがこの読書会を引き継いでくれるだろうか。
#シロクマ文芸部 #古本を
#共創 #ショートショート #私の作品紹介 #スキしてみて
🧡 スキ 🤝 フォロー 💬 コメント…のいずれかでもいただけたら、とても励みになります!
