夏がくれた時間|片想い文芸部
海風が頬に気持ち良い。空気はもちろん。風さえもここでは違う。久しぶりの感覚だった。
同期の仲間たちと浜辺に来ていた。遊び疲れて休んでいると彼が傍らに来て腰を下ろした。
「みんな元気だよねぇ、あれは明日の仕事のことなんて完全に忘れているよね。」
パラソルの日陰の中でも彼の笑顔はまぶしかった。
まぶしいけれど、目を逸らすことができないまま「そうだね」とだけ私は答えた。
そのまま見つめていたら変に思われると気づいた私は、渚に視線を移して言った。
「海なんて、何年も来ていなかった。こうしていると気持ち良いね。」
「うん、来年もみんなで一緒に来たいね」
今度は私と二人で来てくれないかな、そう言おうとしたのだけれど、言えなかった。そこまでの勇気を海風も私にはくれなかった。
私は黙ってうなずいた。二人で並んで座っている。同じ潮騒を聞いている、それだけで十分な気がした。
日が傾いてきている、足元に転がってきたビーチボールを拾うと
「もう少し遊ぼうよ」
そう言って彼は駆け出した。
少し遅れて私も彼の足跡を追いかけた。
ナルさんの片想い文芸部に参加させていただいています。
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