鏡の中の約束
鏡を見るたびに、彼女の幻が私の隣に映る。
鏡の中で微笑む彼女は、時にはあの頃の私自身のようにも見える。
私たちはちっとも似てはいない。彼女は美人で、笑顔が素敵だ。自然と誰もが好きになる。
転校して彼女と別れた。それは半年前のこと。
洗面所で顔を洗う時、玄関の鏡で身だしなみを整える時。ふと視線をずらすと、そこには彼女の笑顔が今もある。
彼女の笑顔のほかにもうひとつ。私には宝物がある。それは手帳に挟んである。
あの日もらった手作りの栞。薄い紙に押し花を挟んで作った栞。
「風船切符みたいでしょ?」そう言って彼女は笑った。
「風船切符って何?」
「昔読んだ童話に出てきたの。風船で空を旅するの。風に飛ばされそうになるけど、その切符を持っていれば大切な場所まで運んでくれるの。これを二人で持っていれば、すぐにまた会えるよ。」
栞は今もここにある。色あせて、押し花も少し崩れかけているけれど。
私たちは約束した。
「絶対に忘れないからね」
「私も。ずっと友達だから」
子供っぽい約束だった。でも、本気だった。
通学路にあるカーブミラーの中の私に半年前の私が重なって見える。彼女と一緒にいた私。
新しい学校にも友達はできた。でもあの時の私は、たぶん今よりも輝いていた。
歩いていると、彼女の足音が聞こえるような気がするときがある。振り返っても誰もいない。
廊下の鏡の中の私の隣にいる彼女に向かって、小さくつぶやく。
「元気にしてる?」
彼女の唇が「元気だよ」という形に動いた気がした。
風船切符のはかない約束は、風に飛ばされてしまったかもしれない。でも、私たちの後ろに消えない足あとは続いている。
片桐みかんさんの企画に参加させていただいています。
🍊第12回 3つのお題
🎈お題①:「鏡の中の住人」
🐾お題②:「風船切符」
⏳お題③:「消えない足あと」
#3つのお題に空想のひらめきを
#共創 #ショートショート #私の作品紹介 #スキしてみて
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