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都会の向日葵|風まかせ文芸部

雨の日曜日の午後。 コンビニから出ると、細かい雨が降っていた。 傘を差すのが面倒に思えるほどの。

駅まであと少し。濡れても構わない。 半分投げやりな気持ちで歩いていたが、花屋の軒先で立ち止まった。

雨に濡れた向日葵が、数本束ねられて売られていた。 こんな天気なのに、太陽の方を向いて咲いている。 「馬鹿みたい」 思わず呟いてしまった。雨で太陽なんて見えはしない。けれど南向きの店先で、向日葵は確かに正面を見つめていた。

その姿がどこか愛おしく思えて、私はしばらくそこに立っていた。 先週の金曜日。同じ部署の男性から食事に誘われた。 「今度、二人で」 そう言われたとき、嬉しい反面、戸惑いもあった。

彼には恋人がいると聞いたことがある。でも最近、その人とうまくいっていないという噂も耳にした。 私は誰かの代わりになりたくはない。 「新しい恋人」と呼ばれるのも嫌だ。

ためらいのあと、 「でも、断る理由もないし」 そう自分に言い聞かせて、来週のデートの約束をしてしまった。

向日葵を見つめながら、私は考える。 この花は、雨の日でも太陽を探している。見えなくても、そこにあると信じて。 私は何を探し求めているのだろう。 優しい笑顔?それとも、漠然とした不安から目を逸らしたいだけだろうか。

「お嬢さん、どうですか?」 花屋のおじさんが声をかけてきた。 「とても元気な向日葵ですよ。雨にも負けずに、ほら」 確かに。雨粒を花びらにためながらも、まっすぐ上を向いている。

「一本ください」 気がつくと、そう言っていた。

「いい選択ですね。この子は特別ですから」 黄色い花を手に、私は雨の中を歩いた。

雨雲の向こうには太陽がある。 複雑な事情や、誰かの影じゃなくて。私自身の気持ちを、まっすぐにみつめれば良い。 「私をどう思っているのか」「今の関係をどうしたいのか」彼に会ったら聞いてみるのだ。

細かい雨は降り続いていたが、やはり傘は要らない。 駅へ向かう私の足取りは軽やかだった。






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